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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第18章
「解ってくれるわね?」
「……はい……」
血の繋がりが濃い兄妹による近親相姦に覚えて当然の嫌悪や厭忌を見せる事無く、それどころか安堵を滲ませた義姉に、ヴィヴィは身の置き場が無く、頷くしかなかった。
「そう。ヴィヴィちゃんが賢明な義妹で良かったわ。では、お忙しいところお邪魔しました」
言外に語り、そして手短に用を済ませた瞳子が、ソファーに置いていたジャケットと鞄を拾い上げる。
「……っ あ、あの……っ」
「なあに、ヴィヴィちゃん?」
咄嗟に呼び止めてしまった声。
絶えず浮かべられる鮮やかな微笑は、常と変らないのに。
今、目の前に対峙する本妻からは、どこか有無を言わせぬ迫力が滲み出ていた。
「―――っ い、え……。大丈夫、です……」
「そう? ではまたね」
すごすごと退路を譲ったヴィヴィに、瞳子はそう言い置いて出て行った。
「………………」
咄嗟に喉元までせり上がってきた問いを、すんでの所で飲み込んだ。
否、飲み下すしかなかった。
『兄の事、愛していますか?』
初対面の際、不躾に相手にぶつけたその問いに、あの人は真っ直ぐに自分を見つめ、こう答えてくれた。
『ヴィヴィちゃん、大丈夫よ。私は匠海さんのことを、心から愛しているわ』
その答えは本心からだったのか?
今も、それと同じ答えを言えるのか?
尋ねるのが怖かった。
相手に問い質すのが、途轍もなく恐ろしかった。
もし、
「匠海さんを愛してなどいないわ。子供達の父として必要なだけよ」
そう言われたら――?
たとえそうだったとしても、自分は何にも成れないのだ。
兄の妻にも、恋人にも、子供達の母にも、兄妹を超えた家族にも――
ぎしり、と耳障りな音が静まり返っていた室内に落ちる。
それが己が噛み締めていた奥歯の悲鳴だと、ぼんやりとした頭の片隅に留めた。
でも、解っていた。
兄妹のどちらからも絶てないこの歪な関係を、終わらせられるのは唯一人。
瞳子さん、この人だけだという事を――