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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第18章
確かに昨日の瞳子は、
『互いの私生活に干渉し合わない。けれど、子供達の為に家庭を守り、育み、安らげる居場所を確保する――そういう契約を結婚の際に結んだのだもの』
そう言っていた。
そしてヴィヴィは互いの利益の上に成り立った偽装夫婦であろうとも、その関係は生涯続けられるものだと信じて疑わなかった。
(でも「離婚という契約」って……。じゃあ、何? 最初から “離婚を前提に結婚した” ってこと……?)
耳を疑う兄夫婦の愚行に、胸中で上げた疑問は咄嗟には口から出て来ず、唇の周りがむず痒くなるほど。
「だから、あと三年。いいや、一年で終わらせる」
「……何、言ってるの……?」
ようやく絞り出せた問いは、戸惑いに揺れていた。
まさかの告白に正直なところ頭が着いて行かないヴィヴィに対し、匠海だけがどんどんと話を進めていく。
「まだ瞳吾が0歳の今、こちらから離婚を要求すれば当然訴訟に発展するだろう。瞳子の性格的にもな」
「………………」
「俺の言う事が信じられない? “狡い不倫男の一時的な言い逃れ” だと思っている?」
「……――っ」
灰色の瞳が慈悲を乞うように見下ろしてくるが、受け止める同色のそれは、翳りを帯びて震えていた。
(離婚……すれば、変わるの? お兄ちゃんとあの人が離婚すれば、じゃあ、私達、元の状態に戻れるの……? 本当に――? 本当にそう?)
混乱するヴィヴィの目の前、迷う暇さえ与えず勝手に結論を急ごうとする匠海が、ジャケットの内ポケットに手を挿れる。
「分かった。じゃあ信じて貰える様に、この場で、ヴィクトリアの前で瞳子に電話をするよ」
「―――っ!?」