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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第19章
匠海と離別し、英国に戻ってから1週間が経った――5月2日(土)
オックスフォードの屋敷は、気の置けない仲間で溢れ返っていた。
双子の学友達は4月末から突入したトリニティ・ターム(三学期)も何のその、五月晴れの空の下で浴びる様にシャンパングラスを傾けている。
23歳の誕生日を祝い駆けつけてくれたゲストを出迎えたヴィヴィの装いに、皆が一様に目を丸くし、そして口を揃え褒めてくれた。
トップスのシャーリングがエレガントなライトグレイのパンツドレスに、髪を編み込みサイドに流したヘアスタイルは、今まで「可愛らしい」と言われることが多かったヴィヴィを、一端のセクシーな女性に見せてくれたようだ。
「ヒュ~~♪ 女子はホント化けるよな。今のヴィヴィは俺の好み どストライクっ!」
そう言って剥き出しの肩を抱いてきたPPEの同級生――ウィルフレッドを、軽く片眉を上げたヴィヴィは「それはどうも」とあしらったが。
二人の前にそびえ立った190cmの男――フィリップに気付くと、やれやれと肩を落としウィルの腕から逃れた。
「公衆の面前で俺様の女に手を出すとは、英国とモニャコ間の国際問題に発展させたいということだな?」
「は? 未だにボーイフレンドの一人にもなれていないくせに」
「ヴィーのBFにはなれていなくとも、俺はクリスのBFなのだから、同じようなものだろ」
「いや……、意味分かんないし」
男二人の馬鹿馬鹿しい馴れ合いをスルーしたヴィヴィは、ちょうど玄関ホールに到着したらしい担当教授とチューターを出迎えに行く。
最終学年の最終学期である今は授業等が無く、代わりに6月に行われる卒業試験に向け皆が必死に勉強している。
「Happy birthday ヴィヴィ! これは見違えた。素敵なレディーじゃないか」
「ふふ。ありがとうございます。エイドリアン教授も蝶ネクタイがキマってますね」
この地に来て、もうすぐで2年という月日が経とうとしていた。
祖国で何もかもを失った自分を慰め、癒し、これから己の足で立つための英気を養ってくれた場所。
今再び感謝の気持ちを込めながら接待していると「招待客は皆お揃いです」と朝比奈が耳打ちしてくれた。