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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第19章
「オッケー。じゃあ、交渉成立だ」
いつの間にか、己の躰はフィリップの腕の中にあって。
互いの濡れた唇を、自らも軽く触れ合わせた男は、軽々と女を抱き上げベッドへと歩を進める。
弛緩した表情を浮かべるヴィヴィを一瞥したフィリップが、まるで壊れ物を扱うような慎重な手つきでスプリングの上に横たえた。
羽織っていたジャケットを脱ぐため一度離れようとした男を、持ち上げられた細腕が追いかける。
「ん?」
まるで求めるような仕草に、ふっと頬を緩めた男。
その引き締まった両頬に冷えた掌を這わせた女は、掠れた声を振り絞り懇願する。
「お願い……。もう、私……“人間” になりたいの……っ」
くしゃりと歪めた顔に浮かぶのは、必死に過去と決別しようとする女の決意だった。
「…………。解かっているよ。もう、大丈夫だ――」
微かに詰まったフィリップは、それでもそう安心させる言葉を吐くと、小さな顔にかかっていた金糸を指で払い。
そして、求められるがまま、ヴィヴィの上に覆い被さっていったのだった。
扉の向こうの朝比奈
「………………」
(ご要望のコーヒー、お持ちしたのですが……ね……)