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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第20章          

「…………?」

「ジャッ」と氷面をこそいだ音に続く、スーと途切れない着氷後のブレード。

右のトウを突いて飛び上がった華奢な身体は、くるりと半回転だけ回ったかと思うと、

助走の勢いとジャンプの高さを思いっきり持て余した状態で着氷した。

今まさに自分が踏み切った場所を振り返り、金の頭を傾げたヴィヴィ。

瞬時に頭の中で軌道修正すると、また助走に入る。

五月にジャンプコーチとなったクリスが「ヴィヴィの4回転ジャンプ習得」に向け、まず取り組んだのがトウループ・ジャンプ。

トウループは助走の回転方向とジャンプの回転方向が同じなので、勢いをそのままジャンプに活かせる、一番初歩のジャンプ。

実はトウループは、離陸した瞬間にすでに半回転回っている。

つまり、4回転トウループだと、空中で回転するのは「4回転 - 0.5回転 = 3.5回転」で良いのだ。

だが――

すでに5度成功させている4回転トウループを踏み切ったヴィヴィは、またすっぽ抜けた状態で着氷してしまった。

「どうしたの、ヴィヴィ……?」

頭の上に?マークを浮かべている妹に、双子の兄はすぐに滑り寄る。

しかし、問われたヴィヴィは文字通り頭を抱えて「う~~~ん」と困った表情を浮かべていた。

「…………?」

「何かね……。う~~ん、笑わないでね?」

そう前置きしたヴィヴィは、自分でも不可解そうに眉根を寄せながら続ける。 

「なんだか、頭の中が軽くなったっていうか……。脳みその比重? が変わってしまったみたいな感じ?」

自分で言っていても良く解からない。

そもそも脳みその比重ってなんだろう?

頭頂葉が痩せて、小脳が太った、みたいな?

そんな訳ある筈が無いのに。

「……? ……バランスが変わってしまった感じで、平衡感覚がいつもと違うの……?」

「そう! う~~~ん」

クリスの的確な表現に、一瞬だけ嬉しそうな表情を浮かべたヴィヴィ。

だが、いくつになっても愛らしさを失わぬ顔は、すぐに困惑のそれに戻る。

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