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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第20章
卒業試験を終えてすぐ、ロシアへ振付に向かい。
英国に戻りカレッジの用向きを片付けた双子は、6月27日(木)に日本の地へ降り立った。
2ヶ月ぶりに帰国した双子の元には、例年以上の取材が押しかけていた。
双子でフィギュアのトップ選手、かつ五輪王者というだけでも途轍もない兄妹だというのに、
妹の四回転ジャンプへの挑戦、そしてそれをサポートする兄のジャンプコーチ就任。
それらは兄妹愛溢れる美談としてもてはやされる一方、ヴィヴィの23歳という年齢での習得は困難を極めるであろうし、現役選手であるクリスの負担も危惧され。
双子の一挙手一投足が流される度、テレビやネット上では連日様々な憶測や議論が飛び交っていた。
そして迎えた6月29日(土)。
都内の一等地に佇む大正11年創業の会館で執り行われたのは、真行寺 太一と円(まどか)の結婚式だった。
兄妹の両親が「してやったり」とほくそ笑む中、神前式にて行われた古式ゆかしい和の婚儀ののち、バンケットルームに場を移し披露宴と相成った。
同じテーブルには東大時代の友人が集まり、双子を囲んで昔話に花が咲いた。
ヴィヴィの突然の休学のせいで皆に心配と戸惑いを与えてしまい、更には「イジメが休学の理由!?」と出た誤報のせいで、旧友達に誤解を与えさせてしまったのではないかと、顔を合わせるのに躊躇していた。
よって円のお陰で「また集まろう!」と、あの頃の様に屈託無く笑いあえるようになったのが救いだった。
あれから3年もの月日が流れた。
死ぬ思いで勉強して入った東大も、結局は1年しか通うことが叶わなかった。
当時の同級生達はこの春、4年で大学を卒業し就職した者、その先の院に進む者、様々だが皆が前へ進んでいる。
今日の主役の一人である円も(昨年みごと合格した外務省専門職員採用試験により)この4月から外務事務官として外務省に採用され、「外交官」という夢に猪突猛進中である。