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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第20章          

今までの自分だったら、そんな旧友達を羨望の眼差しで見つめていただろう。

けれど、今の自分は違う。

変わったのだ。

変わらざるを得なかったのだ。

自分も。

そして、この場にいない匠海も――

「もうっ 匠海さんったら、何度も誘ったのに。どうしても調整出来ない仕事があるからって!」

せっかく美しく着飾っているのに、披露宴の高砂席に坐する新婦は悔しそうに顔をしかめる。

人生に一度きりであろうハレの日に、親友にこんな顔をさせてしまい申し訳ないとは思う。

けれど、ヴィヴィはこの結婚式に匠海が来る事は無いと解かっていた。

あの兄が「もう二度と会わない」そう通告したのだ。

それを違えることは絶対に無いだろうと、23年もの間見続けてきた彼の性格から察せられた。

「そうなんだ……。せっかくのおめでたい席に、兄が、ごめんね?」

事情を話せない代わりに心の底から謝罪したヴィヴィだったが、対する円は何故か「ぷっ」と吹き出してしまった。

「ん? なあに?」

「いやだって、ヴィヴィが匠海さんを「兄」って呼ぶ日が来るなんてさ! いつもは「お兄ちゃぁん♥」だったじゃん?」

「……そんな甘ったれた呼び方をした覚えは……」

今度はヴィヴィが顔をしかめる番だった。

ちなみに、円だって「お兄ちゃんっ( ゚Д゚)」と鬼妹ぶりながら呼んでいたくせに。

今ではすっかり「たいち♡」と甘々で、こちらはあてられて砂糖を吐いてしまいそうだ。

「うんうん、ヴィヴィもやっと “お兄ちゃん離れ” したんだねえ。じゃあ、次はヴィヴィの番だったり?」

「なにが?」

「結婚!」

その言葉に、隣で友人と談笑していたタキシード姿の太一がこちらを振り返り。

そしてヴィヴィに「うちの嫁が申し訳ない」とでも言いたげに苦笑を寄越す。

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