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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第20章
「結婚……」
思わず呟いた言葉に真っ先に脳裏を過ぎったのは、今時フラッシュモブ求婚なんて恥ずかしい事をやってのけた男の顔。
「な~い~わ~~」
ことさらゆっくり首を振って否定したヴィヴィに、円がまた吹き出した。
「まあ、オリンピックシーズンだし、今年は無いだろうけど? でもきっと、五輪が終わったら男がわんさかヴィヴィを誘惑しに行くぞ~~!」
ヌーディーピンクに整えられた指先をワサワサさせ、そう予言めいた事を言って寄越す円は知らないのだ。
「ないわ~~、特に “英国だとひたすらモテない” し!」
その哀しい事実を。
「え~~? イギリスでもこの “ぷりっけつ” をもっとアピールすればいいのに」
そう言ってフォーマルドレスの尻を無遠慮に掴んできた円に、ヴィヴィは思わずその場で小さく飛び上がってしまった。
「きゃっ! ちょ……っ どこの花嫁が、高砂席で女子の尻を鷲掴みにするっての !?」
「はいはい、こっこで~す!」
まったく悪びれる素振りなく敬礼してみせた悪友と記念写真を撮ると、ヴィヴィは元いた席に下がった。
会場の中程に設けられたテーブルからでも、高砂席で客人をもてなしながらも互いに顔を見合わせる、そんな仲睦まじい様子の太一と円がうかがい知れた。
兄と妹として育てられ、静かに愛を育み、将来を誓い合った男女。
そして、
実の兄妹として育てられ、男女としても愛し合っていたはずなのに、歯車が狂い、兄妹としても離れるしかなかった自分達。
両者の違いは何だったのか――?
今更考えてもしょうがない問いが頭をもたげる。
真行寺兄妹が互いに慎重に、相手を思いやりながら距離を縮めていったからか。
自分達は私が一方的に兄を引きずり込み、そこには相手を尊重する気持ちなど無かったからか。
力や脅しで手に入れても、最後にはその手から零れ落ちていく。
そんな事くらい、少し冷静になればあの時の自分でも解かっただろうに。
だが、そういう両者の違いもあるだろうが、
やはり、自分達が添い遂げれなかった、最大の理由は、
「血の繋がり」
だったのだろう――