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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第20章
友人が 真行寺兄妹 改め 真行寺夫妻 となった式の翌日、双子は松濤の実家に滞在していた。
日曜日の家族団欒のテーブルには、父母と双子、そして匠斗が着いていたが、
その父親である匠海は、今朝早く中東へ向けて旅立っており不在だった。
兄夫婦が住んでいた白金台の屋敷は、現在は匠海と匠斗だけが住んでおり、電車で二駅の距離の実家には、よくこうして匠斗を預けに来ているらしかった。
「ダッド、マム……。これはヴィヴィと話し合った事、なんだけどね……」
メインディッシュまで振る舞われたディナーの席で、クリスはそう両親に口を開いた。
「なあに? 改まって」
赤ワインのグラスを傾けていたジュリアンが、微かに首をかしげて息子を見やる。
「うん……。ここ(松濤)の僕達の部屋を潰して、兄さんと匠斗が過ごせる広い部屋に改装してくれていいよ……」
「え……? じゃあ、貴方達はどうするの?」
「客室があるから……。帰省した時はそこでいいよ、ね、ヴィヴィ……?」
クリスの言う通り、篠宮邸は三階建で、一階はリビングなど皆の集う場所、二階は父母の私室と客室、三階が三兄弟の私室となっていた。
年に数回の帰省には、客室を使わせてもらうので十分事足りる。
ヴィヴィがもし、今期でフィギュアを引退したとしても、もう日本に戻るつもりは無いし。
言及はしてこないものの、クリスもおそらく同様な気がした。
「お兄ちゃんと匠斗があの部屋に住むの、今は良くても、将来的に匠斗の子供部屋が必要になるでしょう?」
双子の兄に追随した妹は、しっかりと両親を見つめて話す。
本来ならこの話は、長兄が結婚した際にすべきだったもの。
篠宮の長男であり、家業を継ぐことが決まっている匠海とその妻が、松濤の家に同居するのは時間の問題だと思っていた。
だが、その話が兄夫婦から持ちかけられる事はついぞ無く、まさかの離婚となってしまった。