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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第20章
双子の申し出に相好を崩した父は、母との間の席に座る匠斗の頭をなでなですると、困ったように口を開く。
「ありがとう、クリス、ヴィヴィ。お前達なりに匠海を気遣ってくれているんだね。でも、その必要はないみたいだ」
「え……?」
疑問の声を上げたヴィヴィに、ジュリアンはさも不服そうにグレコリーの後を続ける。
「匠海ったら、白金の家を売却して都内で新居を探すんですって。五十嵐(執事)と……、誰かここらフットマン 兼 料理人を連れて行って……。あと、ナニー(乳母)を常駐させて、そっちで匠斗と住むんですって」
「私達は「ここで同居すれば良いじゃないか」と言ったんだけどねえ~~。匠海も最初はそのつもりだったみたいだけれど「やはり実家に甘えてばかりいられないから」って。水臭い子だよ」
「そうよ~~。ここなら人手も多いし、匠斗といつでも遊べるのに! っていうか……」
そこで言葉を区切ったジュリアンは、一瞬泣き出しそうな表情を浮かべ。
カーンと音を立ててテーブルにワイングラスを降ろすと、そのまま叫んだ。
「瞳吾ぉ~~っ!!!!」
グラスの柄が折れないかハラハラする双子の前、母は早口で不満を爆発させる。
「もう1月以上会ってないのよ! あの瞳吾ちゃんの “むちむちアンヨ” をむちむち出来ていないのよ! こんなのって耐えられるっ!?」
瞳子に引き取られた孫・瞳吾に会えない寂しさを、若干間違った方向で訴えてくる母を、娘は「はは……」と乾いた笑いで受け流すしかない。
だがそんなジュリアンを見捨てなかったのは、もう一人の孫・匠斗だった。
隣の子供椅子に座っていた孫は、五十嵐を振り返り椅子を引いて貰うと、ぴょんと飛び降りてジュリアンの元に駆けつける。
「グランマ、いたいいたいの?」
「ううん、痛くないよ」
どうやら自分が痛くて叫んでいると思ったらしい孫を、ジュリアンがその膝の上に抱き上げる。
「匠斗、なでなでしてあげる」
「……っ ありがとう、ありがとう匠斗」
ジュリアンの肩に顎を乗せ、短い腕と小さな掌でその背中を撫で始めた匠斗に、周りの大人たちが一瞬息を飲んだのが分かった。