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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第20章
「匠斗だってもうすぐ3歳とはいえ、まだママが一番の時期よ! それなのに……っ」
「ジュリアン……。こればかりは匠海たち夫婦の問題だ」
感極まった母に、父が父自身にも言い聞かせるように呟いた。
「わかってるわよぉ~~っ でも、だって、淋しいのよ~~、この私がぁ~~っ!!」
ナプキンに顔を埋め、とうとう「おいおい」泣き始めたジュリアンの背を、労わるように撫でるグレコリー。
そんな両親の痛ましい姿を見続けていたヴィヴィは、しばらくして父に向き合った。
「ダッド」
「うん? 何だね、バンビちゃん?」
「お兄ちゃん……。あの、英国の件、は……?」
以前、テレビ電話で父から相談された「匠海が周りの意見に耳を貸さず、英国マーケットに進出しようとしている一件」をほのめかせた娘に、すぐに理解したグレコリーは表情を緩める。
「ああ、あれなら落ち着いたんだ。もう少し時間をかけて事を運ぶと了承してくれたし、今は周りの声に耳を傾ける余裕がある」
「そう……。良かった……」
とりあえずその件は解決済みだと確認したヴィヴィは、静かに了承した。
「クリスが匠海を根気強く説得してくれてね。本当に助かった、礼を言うよ。ありがとう、クリス」
父からの労いに頷いた兄は、妹に向き直って再び頷く。
「兄さんなら、大丈夫だよ。もう……」
「……そうだ、ね」
「……っ 兄弟って本当に良いわよねえ。それなのに、匠斗と瞳吾は~~っ!!」
兄と弟、そして双子のやり取りを見続けてきた母は、また火が付いたようだ。
「ジュリアン、きっと落ち着いたら瞳吾にもまた会えるから、ね?」
若干絡み酒になってきたジュリアンを、グレコリーが苦笑いしながらいさめるが、
「うぉ~~い、おいおいっ もう、こうなったら呑んでやるっ!」
そう宣言し、再びワイングラスをわし掴んだジュリアン。
そんな母の腕から匠斗を受け取ったクリスは「いや、いつも飲んでるし……」と静かに突っ込んだのだった。