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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第20章
その日の夜、執事の手を借り就寝準備をしていたヴィヴィの元に、一本のテレビ電話がかかってきた。
着信相手を確認したヴィヴィは一瞬、出るかどうしようか悩んだが、
「お出にならなくて宜しいのですか?」
という執事からの確認に「う~~ん、出るか~~」と答えると、彼は折り目正しい礼と共に退室した。
ソファーにだらりと座ったヴィヴィは、タブレットを持ち上げるとしょうがなく通話をオンにする。
「お、ヴィー! 俺のヴィーナス。今日も一段と麗しいね」
そう言って寄越す相手こそ、反吐が出そうなほどの美貌を誇っているというのに。
凛々しい眉の下から覗く甘さを含んだ青い瞳は、他の女性をメロメロにしても、ヴィヴィには糖分過多の青い飴だ。
「……で、何?」
「ん?」
「何の用? もう寝るんだけど」
いつも通りのすっぴんだけど、色気もへったくれもないナイトウェアを着ているので、就寝前だと相手にも分かるだろうに。
そんなトゲトゲしい返事にも、フィリップは顔色一つ変えずに続けた。
「ああ。クリスから「ヴィーが暗黒面に落ちているから、彼氏ならどうにかしろ」って連絡が来てね」
「…………っ」
「ヴィー? どうした?」
思わず息を飲んだヴィヴィに、画面の向こうの男が微かに眉をひそめる。
「……また……」
「?」
「また、迷惑かけちゃった……」
「うん?」
「もうこれ以上、クリスを頼りたくなんてないのにっ」
意外にも感情的な声が口をついて出てしまい、我ながらその事に驚いた。
己でコントロール出来ないところまで、自分は追い詰められていたのだろうか。
そして、それを自分で気付けていなかった事で、またクリスに余計な手間を取らせてしまったのだ。
どうしたら、いつになったら、自分の脚だけで立てるのか。