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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第20章          

握り込んでいた片方の拳の中、自責の念を更に握り潰していると、電話の相手は軽い口調で話しかけてくる。

「う~~ん、それは違うんじゃないか?」

「…………」

「クリスは……。う~~ん、なんだろう? なんというか、ヴィーと添い遂げる為だけに、生きているように見えるけれど?」

「え?」

「ヴィーが「迷惑をかけている」と恐縮していることも、クリスからしてみれば「 “自分だけ” が支えてあげられる喜び」になっている風に見えるけれど?」

第三者であるフィリップからの指摘に、ヴィヴィはさっと顔色を無くす。

「……そん、な……」

確かに、クリスはヴィヴィに甘過ぎるし、常に妹を優先してフォローしてくれる。

けれどそれがもし「手のかかる妹だから仕方がなく」ではなく「妹に必要とされることだけに自分の存在価値を見いだしている」状態だとしたら?

(まさか……そんなはず、無い……。だって、クリスは何だって出来て凄いじゃない。勉強もフィギュアも、周りへの気配りも……)

幼い頃より彼自身が周りから高い評価を受けており、それによって自己肯定も育まれてきている筈――なのに。

でもどこか、双子の兄の危うい部分を日頃から感じ取っていたのか。

金の頭の中で過去のクリスを反芻し始めたヴィヴィを、電話相手が強引に現実に引き戻した。

「でも、それも “おかしい” からね」

「え……?」

(おかしいって……? 何が?)

「 “今度” はクリス――? 違うだろう?」

「―――っ」

フィリップの辛辣な邪推に、ヴィヴィの顔に浮かんだのはれっきとした怒り。


『ヴィクトリア、お前……クリスとやってないだろうな?』

『クリスとSEXしてないか、聞いてるんだ』

『クリスは3/4英国人だし、まだ細いけれど背も高い、いいもの持ってるんじゃないのか? 俺のいない間、あいつに満足させて貰えばいいじゃないか?』

『双子、だもんなあ。半分しか血の繋がってない俺なんかより、よっぽど躰の相性、いいんじゃないのか?』


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