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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第20章
「……もう二度と、買うものか……」
虚脱しながら呟いたそれに、
「ちなみに、塩対応も大好物」
間髪入れずに退路を断った、一枚も二枚も上手な男。
「………………」
(もう、どないせえっちゅうねん……orz)
明後日の方向を見やり、明け透けに げんなりした表情を浮かべたヴィヴィに、フィリップはさも愉快そうに笑ったのだった。
それから一週間後。
日本へとんぼ返りした双子は、週末に行われたTwinkle ICE in 東京を執り仕切っていた。
二度目となる東京公演は、ありがたい事に満員御礼。
本邦初公開となる双子振付のエキシビション・プログラム ABBAのミュージカル映画『Mamma Mia!』は勿論のこと、それに輪をかけて注目を集めていたのは――
「リンクサイドの浅田さ~~ん――。いよいよ、我々フィギュアファンが待ち望んだ “この時” がやって来ましたね」
『はい! 日本人では2002年、当時14歳だった安藤選手が4回転サルコウを公式戦で成功させていますが、それ以降はありませんでした。それが今日、アイスショーという舞台ではありますが篠宮ヴィクトリア選手が “4回転トゥループに挑戦する” と記者会見で発表しましたね』
灯りが最小限まで落とされたリンクサイド、カメラクルーの照明に映し出された浅田は、興奮気味に中継を繋ぐ。
「それも、双子一緒に跳ぶなんて! ですよね」
放送席の富士山テレビ・中村アナウンサーの声も期待で明るい。
『そうですね、ただ、クリス選手と一緒に跳ぶ事は自分の中では想定内でした』
「え? そうなんですか?」
『ええ。ヴィクトリア選手が三回転アクセルの不調で苦しんでいた時に「クリスと一緒なら成功するんです~」と言っていて。なので公の場で初挑戦する時は、きっとお兄さんと一緒に跳ぶだろうなと思っていました』
「なるほど。さすが公私共に仲の良い浅田さんならではの推理ですね」
『ふふふ。もう二人とも可愛くてかわいくて。弟と妹みたいです 笑』
眉尻を下げてのろける浅田に、放送席の中村が苦笑する。
「そんな浅田さんも、第一部のプログラムを滑られてお疲れかと思いますが、ぜひお二人の様子をリンク側から教えて下さいね」
『はい、頑張ります!』
左手で小さくガッツポーズをした浅田から、リンク中央に視界が切り替わる。