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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第20章
「ちょ……っ ダッド!?」
血相を変えて父の所へ飛んで行こうとしたヴィヴィだが、それよりも長いコンパスを持つフィリップの方が早かった。
スタスタと歩み寄ると無駄ひとつない洗練された所作で片脚を付き、グレコリーの前に跪く。
「これはこれは、お父様。お恥ずかしいところをお見せしてしまいました。わたくし、ヴィクトリアさんと清く正しい交際をさせて頂いております、フィリップ・ベタンクールと申します。以後、お見知りおきを」
しかし、フィリップの礼儀正しい挨拶はグレコリーの傷に更に塩を塗り込んだ。
「~~~っ!? 交際……っ 私の “純真なヴィヴィ” が……、お、男なんかと、不純異性交遊……っ!!!」
「大丈夫でございますか、グレコリー様。お気を確かに!」
やおら喜劇的に両腕で頭を掻き毟りだした父に、ドアマンが飛んできてその両腕を押さえる。
そして、自分でやらかした事とはいえ、目の前で繰り広げられているとんだ茶番劇に、
(男なんか……って、じゃあ女なら良かったのかな……?)
ヴィヴィはそんなどうでも良い事を思いながら、金の前髪から覗いた眉尻をポリポリと搔いたのであった。