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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第20章          

「まあ、お母様、だなんて! 嬉しいわぁ~~っ♡ ……というか、それにしても……」

英国ハーフにしてはちんちくりんで童顔、極め付けにはツルペタの我が娘の隣に立つには、あまりに不釣り合いな彼氏に、ジュリアンは二人を見比べつつ「勿体無い……」という気持ちを隠す事無くその顔に張り付けていた。

そしてその隣、どかりと腰を降ろした父は未だショックから立ち直れておらず、いつもはきちんと整えられた金の頭髪は、頭を掻き毟り過ぎたせいで もじゃもじゃになっていた。

席を進められたフィリップは、クリスとヴィヴィの間に腰かけると、とても嬉しそうにグレコリーに笑顔を向ける。

「先月、お父様が The Financial Times(英国の経済紙)に寄稿された記事を目にし、是非お会いしてお話ししたいと――」

愛娘の彼氏出現にショックを受けている父には、その仕事ぶりから会話を広げようとするフィリップの気配りは正しかったと思う。

だが、そう話を振られたグレコリーは乱れた前髪の間から覗いた瞳を険しく歪め、苦々しく口を開く。

「お、お、お、お……っ」

「お……? って、なあに? ダッド」

軽く首を傾げたヴィヴィに、どうやら衝撃で情緒不安定になったらしい父は、徐々に涙目になっていき。

「お……、お父様って言うなぁ~~っ!! ……ぐすんぐすん……」

そう弱々しく喚いたグレコリーは、隣のジュリアンの肩に頭を乗せるといじけてしまった。

傷心の夫に理解ある妻の顔をしたジュリアンが、大の大人の男の頭を「よしよし」しながら慰める。

そして、何故かその唇をにやあ と緩めたジュリアンは、

「まあまあ、ヴィヴィもいっぱしの女になったのよ。家を巣立ってから今までのほうが、恵まれていたのよ」

先程 “夫から言われたセリフ” をもじった言葉を返した妻は、至極愉しそうなのだった。



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