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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第20章
娘のボーイフレンドを初めて紹介され廃人と化した父と、「やっと娘にも春が来た!!」と手放しで喜ぶ母と、件のボーフレンドは、真っ昼間から酒盛りへと突入し。
その様子を興味無さそうに傍観していたクリスは「お酒飲むなら、ヒューの病院でも冷かして来よう……」と言って席を立ち、双子より10歳上の母方の従兄・ヒューが勤務するロンドン市内の病院へ出かけてしまった。
「親孝行しないと」と思い、両親とフィリップの間に入ってお酌をしていたヴィヴィだったが、父と母がだいぶ酔っぱらってしまったのと、
意外な事にすぐに両親と意気投合した今彼の “人たらしブリ” を目にしたことにより、「三人を放っておいても大丈夫そうだな」と席を立った。
自分に割り当てられた客室に戻ったヴィヴィは、麦わら帽子と軍手を手に裏庭へ足を向ける。
いつの間にやら姿が見えなくなっていた祖母・菊子は、自分を追ってやってきた孫娘を、お日様のような笑顔で迎えてくれる。
「ヴィヴィったら、やるじゃない! グランマは目から眼球が飛び出そうなほど驚いたわよ」
そう言ってチャーミングに笑いながら雑草を抜く祖母に、ヴィヴィは「ははは」と乾いた笑いを零しながらその手伝いを始める。
「これ、初めて見た、面白い形」
視界に入ったそれの中心部は五輪の白い花、そして後ろから覆い被さるように紫色の五輪の花びらが伸びている。
「これはオダマキっていうのよ」
「……小田真紀……?」
聞き慣れない名前が、金の頭の中で日本人の名前に変換される。
「ふふふ。ちなみに花言葉は――」
そこで何故か勿体ぶった祖母は悪戯っぽく笑うと、その花言葉を教えてくれた。
「“愚か” よ」
「え……っ!? 怖……」
「しかも西の庭に多く咲かせると“金欠”になるんですって」
悪巧みするようにニヤッと笑って寄越す菊子に、今度はヴィヴィが目蓋をひん剥いた。
「……っ!? ちょ、なんでそんなお花育ててるの?」
「だって、綺麗なんですもの~~」
焦る孫娘に関せず、広大なイングリッシュガーデンを自分好みに彩ることに長けた祖母は、そう一蹴した。