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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第1章  

 リンクの両サイドの壁に2台ずつ、計4台設置された旋回型のカメラ。
 
 コンピューター制御のそれは、選手の演技を自動撮影し、

 各選手を囲んでいる面積や縦横比、移動の速度、曲率から、誰が何の技を行ったか等 自動で認識出来る。

 リンク面のどこをどう滑ったか、その速度。

 ジャンプやスピンの種類、回転数も記録・蓄積可能で。

 過去の映像と並べて表示し、改良点を比較出来る。

 その日のレッスンを終了した直後には双子の元に、自動的にそれらの映像分析データがメールされる仕組みが出来上がっていた。

 自分達の所属リンクが、(言い換えれば)匠海の所有物であるという事実を知らされ、ヴィヴィはショックに打ちひしがれた。

 本気で所属先を替えようかとまで思い詰めたが、それでも思い留まったのは、

 何処に逃げようと、兄は自分の行く先々を先回りしてしまうのではないか――?

 という避けられない現実があったからだ。

 さすがにこれにはクリスも当惑し、直接 匠海とSkypeで話を持ったが。

 当の匠海の返事は、

『あのリンクを買い取ったのは、資産価値が上がると見越しての事。通常のSPC(資産流動化)と同様に、2・3年後に資産価値が上昇した時点で売り飛ばし、その利益を配当後に匿名組合も解散する』

との一辺倒だったという。

 実際、双子がこのリンクに世話になりだした途端、受講希望の生徒が殺到して営業利益も上がり。

 そして匠海が見越した通り、リンクの資産価値も跳ね上がっているという。

 当初、ヴィヴィはカメラの設置されたリンクで練習する事を拒んでいた。

 しかし もう1面のリンクは、アイスホッケーの用途が強かったし。

 なおかつ、母・ジュリアンに師事していた頃からの日課 “毎日自分の滑りを見直すこと” が出来ない状況で、ストレスが溜まり。

 また、日課を行わない事で技術的な乱れも生じてしまい。

 結果、泣く泣く カメラの設置されたフィギュア用リンクで練習する事を、余儀なくされているのだ。

 もう あれから1年経ち、ある程度は慣れたのだが。

 それでも時折、日本から兄に監視されている気がしてならなくて。

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