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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第21章 .

クリスは凄い。

英明果敢、意志堅固、堅忍不抜――

それは万人が認める程に素晴らしく、全ての才に長けておりながらも、全く驕る事の無い人格者でもある。

自慢の兄だし、いつまで経っても追いつけないライバルでもある。

けれどヴィヴィには、クリスの中に唯一 看過出来ぬところがある。

それはというと――

(もうほんと、クリスは “完璧主義すぎる” んじゃ~~~っ!!!)

クリスがジャンプコーチに就任してからというもの、兄からもたらされた日々のノルマは、かつて東大受験で味わった「教育兄ぶり」を髣髴とさせるもので。

コーチと生徒として従順に付き従ってきたヴィヴィは、もう爆発寸前だったのだ。

胸の前で両方の指をワキワキさせたヴィヴィは、一気呵成とばかりにクリスの体中をこそばし始めた。

「……っ!? ちょ、ヴィっ やめ……っ」

「「やめて」と言われてやめてあげられるほど、善人じゃないんでぇ~~。ひぃ~っ ひひひっ!」

もうすぐハロウィンの季節だからか、愛らしい顔には不釣り合いな魔女の如き嗤い声を上げるヴィヴィ。

「ひっ な、に言……って……!」

「ほ~~れ、ほれほれ」

「どこのエロおやじ?」と突っ込まれそうなセリフを吐きながら、兄の弱い脇腹をツンツンして身悶えさせる妹は、心底 愉快そうな表情を浮かべていた。

「や……っ め、てってば……っ!!」

珍しく切羽詰った声を上げたクリスに、さすがに軽く腰を浮かせたヴィヴィ。

その隙にうつ伏せから仰向けに身体をひねらせたクリスは、憮然とした表情で妹を見上げてくる。

仕方なくその腰の上に座りなおしたヴィヴィは、むずがりながら唇を尖らせた。

「え゛~~、もう終わりぃ ~~?」

「終わりだよ! もう、ほら、降りて……」

これ以上くすぐられぬよう脇を絞めたクリスが、胡乱な視線を送ってくる。

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