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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第21章 .

言われた通りコーヒーミルに豆をセットしたヴィヴィは、ゴリゴリと音を立てながら兄好みに挽いていく。


『……フィリップがいて、良かったね……』


クリスのその言葉に引きずられるように、周りの声が頭の中に蘇える。


『でも、そうか。うん……じゃあ、やっぱりあの選曲で良かったな。ヴィヴィ、おめでとう』

『意外と気が合うね、お二人さん……』

『あらあら、ヴィヴィったら、満更でも無さそうな顔をしているわ』


その声は更に、ヴィヴィの目の前に両腕を広げ、さもそれが正しい選択であるように提示してくる。


「さあ、これこそが “貴女の幸せ” よ――」


皆は そう口にはしない。

けれども、まるでそれが正解のように、最良で最善の選択だと お膳立てしようとしているように、今のヴィヴィの歪んだ認知能力では受け取れてしまう。

「………………」


クリス、貴方もそうなの?

“これ” が 双子の妹の幸せ だと思っているの?

貴方は それで、いいの?

そして、自分は――?


ぎゅうと音がしそうなほど固く視界を遮ったヴィヴィ。

その目蓋に、先程 紛れもない男の貌を覗かせた双子の兄が浮かぶ。

寄せられる唇に気付いていたのに、自分は何故か「避ける」という行動に思い至らなかった。

狡賢くて醜くて、ひたすら愚鈍すぎる自分を、全て受け入れ許しを与え、

更には前を見る力を与えてくれた、そんな自分の大切な人。

辛くてどん底まで墜ちている時に、いつも当たり前の様に傍にいて支え続けてくれた双子の片割れ。

My better half

まるでおままごとの様に二人の関係をそう言い切って、それで総べてを納得させようとしていた、幼かった私達。

けれど、あれから幾年も経ち。

二人を取り巻く環境は何もかも激変してしまった。

将来を誓い合ったはずの男から離れ、異国の地で始めた双子だけの生活。

互いに競技と勉学に打ち込む日々の中、匠海との再開、そして決別という苦境もあった。

それら全てを、当たり前のように献身的に支えてくれていたクリス。

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