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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第21章 .
そうして、
他人には漏らせぬ罪を共犯させ、互いの時間を共有し、
恐らく本人達も気づかぬ内に、二人の距離は切迫してしまっていた。
だから、今しがた、
クリスがヴィヴィの中の “女” を目の当たりにして
更には、
ヴィヴィがクリスの中の “男” を垣間見てしまった時、
兄妹間なら当然に湧き上がるべき嫌悪――それすら抱かなかった。
抱けなかった。
そう、まるで、そうするのが当然の事のようにすら思えて。
今まで数える事すら気が遠くなるほど、互いの肌に触れ合ってきたのに、
何故 “そういう” 触れ合いは無かったのか。
そんな有り得ない疑問すら浮かんできて。
『 “今度” はクリス――? 違うだろう?』
今の自分にとっての理性――フィリップの邪推が、ヴィヴィにタイヤを軋ませながらブレーキを引かせる。
違うよ。
違う。
きっと、違う。
ううん、絶対に違う……っ
自分は
身も心も全て捧げた男を失わざるを得なかった。
そして底も解からぬほど掘削し尽くされ、抉られた己の穴を、
産まれた時からずっと一緒で、
自分の何もかもを解かってくれていて、
絶対に自分を裏切る事が “出来無い” クリスで埋める――
そんな安直で心地良い逃げ路へと、迷い込みたかった。
ただ、それだけ――だ。
「………………」
キスをしても、されてもいないのに、
なぜか無性にそうしたくて。
しなければいけない気がして。
己の薄い唇を手の甲でごしごしと拭ったヴィヴィは、頭の中のものを全て追いやろうと、ぶるぶると頭を振ったのだった。