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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第21章 .
『さっそく、張先生のあっぱれを頂きました」と、総合司会・関田。
『言う事成す事、何のケチのつけようもない! 妹のジャンプ・コーチをしながら現役で自分もキープ出来るなんて、いくら辛口の僕だって舌を巻くしかないよ!』
いつも温かくも辛らつな意見を述べる張が太鼓判を押す様子に、男性アナウンサーが続ける。
『張先生も脱帽、ということですね。ところが今回注目を集めたのは、それだけでは無かったんです。まず、こちらの女子シングルの結果なんですが――』
アナウンサーが出したフリップに、カメラがズームする。
1位 エリーナ・コスティリョワ(15) ロシア
2位 篠宮 ヴィクトリア(23) 日本
3位 マイア・シャタロワ(17) ロシア
4位 ポリーナ・ブリホトナヤ(18) ロシア
5位 タイシア・コロビツィナ(16) ロシア
6位 アリサ・リュウ(21) アメリカ
『大方の予想通り、ロシア独壇場だね。それでもちゃんと表彰台に食い込んできているヴィクトリア選手、あっぱれと言っていいんじゃないの?』と張。
それにコメンテータの一人、ゲストの元巨人軍・上腹氏が続く。
『そうですね。それにしても、ロシアはティーンばかりじゃないですか。やはり身体が細くて背も低いと、高難度のジャンプが飛びやすいんでしょうね』
『そうなんです、上腹さんのおっしゃる通りでして。五輪シーズンになると出場年齢を満たしたばかりの15歳の選手が活躍するのが通例なのですが――』と、アナウンサー。
その言葉に、張と上腹が感慨深げに呟く。
『8年前のヴィクトリア選手も、15歳でポッと出てきて、いきなりの金メダルだったもんねえ」
『8年……、もうそんなに経ちますか』
二人の言葉に頷いたアナウンサー。
『そうでしたね。今回、この女子の結果にも注目が集まっているのですが。さらにもう一つ、予期せぬところで注目を集める出来事がありました。次はこちらのVTRを見て頂きましょう――』
画面はガヤガヤと騒がしい映像に切り替わる。
『こちらはFS後の、各国記者がインタビューを行うバックヤードですね』と、アナウンサー。