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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第21章 .
差し出された米国のテレビ番組名が記されたマイクに、日本代表ジャージを纏ったヴィヴィが英語で答えていた。
「結果は2位だったんですが。コーチ達と目標にしてきた4回転フリップ、3回転アクセルの入り、セカンドのループ、どれも加点が貰えるものに揃える事が出来て、とにかく今は、ほっとしています」
インタビュアーが質問を続ける。
「篠宮選手にとってGPシリーズ第二戦目となるNHK杯では「4回転トウループを構成に入れてくるのでは?」という専門家の意見もありますが?」
「そうですね。今回のFSは自分的には強い気持ちで臨めたので、次回はもっと攻められるように挑戦したいと思います」
どの記者にも同じ返事を繰り返してきたヴィヴィは、最後ににっこりと微笑んで軽く会釈をすると、次の記者のところに移動しようとした。
だが、食い下がってきたインタビュアーにまた向き直る。
「すみません、もう一つだけ! 先日 国際スケート連盟のヤナ・ダイケマ会長が、フィギュアにおいて冬季五輪や世界選手権の年齢制限を現行の15歳以上から17歳以上に引き上げることを検討する意向を示したという報道がなされました。この件について、篠宮選手のコメントを頂けますか?」
「………………」
先ほどまでの微笑の上に戸惑いの表情を張り付けたヴィヴィに、インタビュアーが更に重ねる。
「フィギュアスケートの世界では特に女子において、体重が軽く、高難度ジャンプを跳べる10代前半から中盤でキャリアのピークを迎える選手が多く、選手寿命の低下が問題視されていますよね。
昨年にはそれまで禁止されていた “SPでの女子選手4回転ジェンプ” が解禁され、ますます選手の低年齢化が叫ばれています。それに対し、7月にはペアの女子選手が自宅マンションから転落死しています。
20歳前後で燃え尽き、摂食障害や精神障害に陥る選手も多くいることは以前より問題視されていましたよね?」
べらべらと早口で事実を連ねる相手に、押され気味のヴィヴィは「そう、ですね……」と呟くしかない。