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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第21章 .
「災難だったね、ヴィヴィちゃん……。でもぬかりなく答えていて偉かったよ」
会社に向かう為に家を出た筈の太一が、テレビ画面を見つめながらそう呟くと、
「お兄ちゃんっ じゃなかった、太一っ!」
新婚ほやほやで、まだよく呼び名を間違える円が、まるで喧嘩を売っているかの如き形相で夫を振り返る。
「う、うん?」
「NHK杯のチケット、何とか入手して!」
NHK杯まで後18日しか無いと言うのに、無茶苦茶な事を要求してくる元妹・現妻に、太一はぎょっとして「えっ!?」と思わず口走る。
だが我妻は言い出したら止まらない人間である事は、23年の付き合いで痛いほど分かっていた。
「死ぬ気で入手してっ!!!」
太一からしたら可愛くて仕方がない顔で、くわっと目を見開いた妻を止められる筈も無く。
「……わかりましたよ、奥さん。じゃ、今度こそ行ってきま~~す」
そう言って腕時計を確認した太一は、いつもよりも急ぎ足で寝室を出て行く。
その背中を威勢の良い円の声が「いってら――っ!!」と後押ししたのだった。