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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第21章 .
巧みに散りばめられた装飾音符は作曲家ファリャの狙い通り、フラメンコの特徴的なこぶし回しとして、情熱的でミステリアスな雰囲気を醸し出す。
そんな中、公式戦では二度目の挑戦となる4回転トウループを踏み切る。
「4回転トウループ……。うん、着氷後も流れが途切れず、これは高いGOEが期待できますね」
荒河のそのジャッジに、アナウンサーが興奮を隠しきれずに叫ぶ。
「跳んだ――っ! ファイナルでも4回転を2種類を跳んで見せた、篠宮!!」
「4回転2本を手堅く決め、これは勢いに乗ってきましたね」
フライングからのキャメルスピン、ドーナツスピン、キャッチフットレイバックスピン。
それらをトラベリング無く回りきったヴィヴィ。
リンク半周を使った助走ののち、モホークを踏んでから3回転ルッツを降り。
着氷後はスリーターンからイーグルに乗ると、まるでこれまでの自分を見返すように、ルッツを降りた軌跡を静かな瞳で認めていた。
そんなヴィヴィの目を覚ますべく厳かに鳴らされるのは、真夜中を告げる12の鐘。
第7曲『真夜中、呪文』
鐘の音が繰り返す不協和音は、亡霊を葬るための呪文の言葉。
トラベリングから入ったキャメルスピンはウィンドミルを挟み、チェンジフットすると、腰を落としたシットスピンから両手で脚を持ち上げたビールマンスピンで締めくくられる。
「演技後半です。コレオグラフィックシークエンス――」
曲はプログラムを締めくくる第8曲『Danza ritual del Fuego.(火祭りの踊り)』に移行する。
ヴィオラによるE音のトリルが静かに奏でられる中、バックで入ってきたヴィヴィが両脚のブレードを外側に開き(イーグル)、
そして背中が氷面に着きそうなくらい すれすれまで倒し滑走する大技――クリムキン・イーグルを披露すれば。
続くE音とF音が交互に奏されるトリルは、大歓声にかき消された。
3連音による装飾が多用されたオーボエの主旋律に乗せ、右足をカッと蹴り上げ。
ルーズに纏め上げた金の頭の横、裏拍を手拍子で三度叩いたヴィヴィは、短いスパイラルから3回転アクセルを跳んだ。
「3回転アクセル」
「篠宮選手、演技後半に入っても揺るぎないジャンプの安定性!」