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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第21章 .
「荒河さんの仰る通り、我々は本当に「凄い」ものを見せて貰いましたね」
「そうですね。ヴィクトリア選手の根気強さ、クリス・ジャンプコーチの綿密な計画と実行。そして忘れてはならない、ショーン・ヘッドコーチのチーム全体を纏め上げる力――それらの内、どれが欠けても成し遂げられなかった演技構成。そして踊りきったプログラムでした」
会場の巨大モニターに映し出される最終滑走者のスロー映像に、会場はまだどよめき続けていた。
そんな中、表示されたフィギュア向けのトラッキング技術(開始と終了地点、各エレメンツの配置とリンクカバー率、スケーティング速度が測れるらしいよ!)の結果に、観客が更に沸く。
「I-STATSです。荒河さん、最高速度が28km/h――!」
「はい。肉眼で見ていても、とてもスピードに乗っているなと感じました」
「この数字は、今大会の女子選手の中でも、飛び抜けて高い数値です」
「プログラム全体に緩急をつけつつもトップスピードを展開している。スピンの位置もリンクをバランスよく配置していて、このあたりも良いプログラムだなと感じました」
そう、荒河が振付師のジャンナ・モロゾワの功績を称える。
「最後の3連続ジャンプですが、前回のグランプリシリーズ・NHK杯までは、3回転フリップ+2回転ループ+2回転ループの構成でしたね?」
「そうなんです。このグランプリ・ファイナルで、3回転フリップ+1回転オイラー+3回転サルコウに変えてきました。元々の基礎点が9.57点で、この変更により11.11点に上げる事に成功しています」
「4回転2種類とこの3連続で、全日本選手権とその後の五輪も挑んでくることになるんでしょうか?」
清水アナウンサーの興奮気味の声に、自信を含んだ荒河の声が続く。
「はい、今日見せてくれたこのFSが、篠宮選手にとっての完成形になると思われます」
「篠宮選手、五輪前の最後の国際大会を素晴らしい演技で締め括りました! さて、そろそろ得点が出ますでしょうか――?」
「確実に、先のNHK杯より高い得点が出るでしょうね!」