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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第22章
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「うん!」
「お勤め、ご苦労様でした」
「うん……」
労をねぎらう声掛けに何故か、威勢の良かった返事が急に小さなものになり。
微かに眉を上げた執事は、小さな頭に添えた掌をポンポンとあやす様に叩いた。
「……貴女は貴女。クリス様はクリス様です」
「う゛っ……うん……。わ、分かってるんだけどぉ~~っ」
どうしてこうなってしまったのか。
同じ母のお腹から ほぼ同時に出て来た筈なのに、片や――五輪・三大会連続 金の兄(しかも妹のジャンプコーチも兼務)に。
片や――言わずもがなの妹の自分。
さすがに差が空きすぎて、その存在自体をプレッシャーに感じてしまう感は否めない。
「……っ ……もっと!」
「はい?」
「もっと、ギューッとして……?」
「はい。お嬢様」
遠慮がちに添えていただけの掌が、今度は両腕全部で抱き締めてくれる抱擁に代わり。
幼き日からその腕の中で守られてきたヴィヴィは、心底安堵したように目蓋を閉じたのだった。
朝比奈「クリス様も、帰宅されたら抱き締めさせて下さいますかね?」
ヴィヴィ「吾輩には与り知らぬ」