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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第22章
2026年2月20日。
昨日 個人女子シングルのSPが行われての中一日。
翌日21日にFSが控えているヴィヴィの姿は、試合会場の近くに借り上げられた小さなホテルにあった。
日本のスケ連がフィギュア勢とスピードスケート勢の為だけに準備したホテル。
そのロビーで元リンクメイトの下城 舞を待つ間、ヴィヴィは点けっぱなしのテレビ画面を ぼぉ――っと見ていた。
『ミラノ・コルティナ五輪、大会 第13日目――同国での冬季五輪は2006年トリノ以来となる20年ぶりの開催とあって、ここミラノの街は活気にあふれているね?』
解説のアンジェロ・ドルフィーンの言葉通り、画面に映し出されたミラノの街並には煌びやかな電飾が施され、夜でも多くの人出があった。
『それもそうだが、やはり先日 クリス 篠宮選手の五輪三大会・連続金メダルというとんでもない快挙に、今も世界中の皆が酔いしれているのだろうね。そして今日――大・大・大注目の個人 女子シングルのSP!』
実況のマッシミリアーノ・アンベーニの興奮を隠せぬ声と共に、画面はスケート会場であるメディオラヌム フォーラムのリンクに切り替わった。
12,700人を収容出来るアリーナには大観衆が詰めかけ、その中央のリンクでは、今まさに最終グループの6分間練習が終了したところだ。
『このグループの第一滑走者は、日本のヴィクトリア 篠宮(23)選手。先日の団体戦ではSPで見事1位! 文句のつけ様の無い圧巻の滑りだった』
『同感だね。ただ、今の彼女が置かれている状況は、団体戦でのそれとは異なる――なんと、ここにきて、ロシアのエリーナ・コスティリョワ(15)選手が、先のグループで四回転フリップを降りたからね!!』
『エリーナ選手……いやいや、本当に心臓が強い。団体戦SPでは4回転が降りられず、個人戦SPでは誰もが「4回転は回避するだろう」とよんでいたのに、まさかまさか!? だったね!』
『今年からルールが改正され、女子SPでも4回転ジャンプを組み込むことが可能になった――。それに倣い、これまでの試合で挑戦し続けるもクリーンに降りられなかったエリーナ選手は、見事、この五輪の地に於いて、その偉業を成し遂げたんだ! 度胸が無いと出来る事じゃないね』