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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第22章     

(そう、これは夢! 絶対に、夢なんだからっ!!!)

そして遠くから微かに聞こえるのは、自分の名前を叫ぶ声。

『……ィっ ――ヴィ!?』

その声に勇気付けられたヴィヴィは、ぐっと目頭に力を込める。


目を覚ませ。

目を覚ませ、自分。

いい加減、現実を見なさい。

このクソ重たい目蓋を、なんとかかんとか持ち上げて――

『ヴィヴィ……っ!!』


白と赤だけだった眩い世界が一瞬にして暗転し、どうやら夢から醒めたらしいヴィヴィ。

覚醒の直前まで自分の名前を呼び続けてくれた人物の声に思い当たり、ハッと我に返ると、また耳を澄ます。

だが、数秒待っても、数十秒待っても、己の耳に届くのは、ただただ不格好な自分の喘ぎだけだった。

「…………」

悪夢を見たのだ。

現実ではありえない程バカバカしい夢を見ただけだ。

1分ほど経過すると、混乱していた頭の中でも そう理解が及んで、荒れていた呼吸も落ち着いた。

漆黒だけだった部屋に、徐々に夜目が効くようになり。

そして、ふと首を傾げる。

(私、寝る前にベッドサイドのランプだけ、少し点けてたはずだけど……?)

幼少の頃より根っからの怖がりのヴィヴィは、一つでもランプを点けていないと寝られないのだが。

「……っ こ、こっちのが怖い……」

スケ連が借りてくれたホテルの一室で、確かに一人で入眠した筈なのに。

じゃあ一体、どうして今は電気一つ点いていないのか?

この部屋にいるのは自分だけ。

ならば、ランプを消すなんてことができる存在は、ただ一つしかない。

ぞっと悪寒が背筋を這い上がっていく。

それで無くとも先程の悪夢でぐっしょり汗をかいた身体は、ぶるると大きく震え上がった。

いよいよ恐怖に耐えられなくなったヴィヴィが、思いっきり「ぎゃ――っ オバケ――!!」と叫んでやろうとした、その時。

「……ん……、むにゃ……」

すぐ側から聞こえたのは、明らかなる寝言。

そして尻に伝わるのは、スプリングが動いた感触。

「……うん……?」

手探りでサイドランプのスイッチを探し押したヴィヴィが目にしたのは、やはりというか何と言うか。

妹のベッドに潜り込み惰眠を貪っている、双子の兄の寝姿だった。

(なんだ……、クリスがライト消したのか……。てか、オバケじゃなくて良かったぁ~~っ!)

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