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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第1章  

「あ! かっこい~っ クリス!」

 腰を支えられたままのヴィヴィが、そう誉めれば、

「そうそう、いいね。まさに色男!」

 講師も誉める。

「それに、途中のステップ。 ♪タラタ、タタタラ~♪ のところ、オーチョから ためて……こう」

 男性講師が女性講師とホールドを組み、説明し始める。

 オルケッタというそれは、脚を揃えて向かい合ったのち、

 男が左後にさっと左脚を後退しつつ、腰に手を当てて粋がったポーズを取るもので。
 
 カウントを取りながら、早速やって見せた双子に、

「うんっ すっごくいい! なんか『俺様がリードしてやってるんだからな?』的な匂いがプンプンしてきて、キュート……じゃなかった、そそられるわあ♡」

 一瞬 本音を漏らした女性講師は、慌てて言い直していた。

 瓜二つの灰色の瞳で、それぞれ視線を交わした兄妹。

((う~~ん。やっぱり、双子で踊ると、色気的なものが不足してる……?))

 双子は同時に、それぞれの頭の中で同じ事を思っていたのだが。

(ま、いっか~。色っぽい衣装着て化粧すれば、それなりに見えるっしょ!)

と、ヴィヴィはどこまでも能天気なのであった。





 1時間半のタンゴのレッスンが終了し、リンクへと向かった双子の目前。

 どうやら生徒の保護者から差し入れがあったらしく、リンクメイト達がシュークリームを手にしていた。

「あ……、良いもの食べてるんだ……」

 目ざとく見つけたヴィヴィは、羨ましそうに寄って行くが、勧められても手に取る事は無くて。

(美味しそう……でも、カロリー高そう……。うぅ、我慢がまん……(T_T))

 そう心で泣きながら、観客席に腰を降ろしスケート靴を履き始める。

「ヴィヴィ、ほら、1口……」

 傍に寄ったクリスが手にしている大きなシューを、妹の口元に寄せて来た。

 クリスはいいのだ、クリスは。

 彼は細過ぎるので、逆に「沢山食べなさい!」といつも怒られるほうで。

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