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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章   

 質量のあるものが与えられるのを、今か今かと待ち望み、ひくついている膣口に、

 匠海は今すぐにでも挿れたそうに、ちゅぷちゅぷと蜜を絡ませながら、先っぽの柔い部分を押し付けてきて。

「ふぁ……!? あ、あんっ だ、だめ……っ やぁん」

 亀頭の先をくちゅりと押し当てられるだけで、ヴィヴィの腰がびくんと痙攣していた。

 もはや膣内はうねうねと蠢いて、少しの刺激も逃さないと、貪欲に快楽を欲し。

 匠海が分け入って来てくれるのを、首を長くして待ち侘びていた。

 ここまでするなら、もういっその事、

 一思いに貫いてくれれば、

 こんな苦しみを味合わなくて済むのに――っ

「~~~っっ」

 ぐしゃりと顔を歪めたヴィヴィの瞳に、ぼんやりと涙が滲む。


 ああ、そうよ。

 嘘よ。

 全部ウソよっ!

 自分は、死を覚悟した時。

 最期に愛する匠海に躰の隅々まで愛されて、

 そして、その恍惚だけを胸に、死の路を辿りたいと切実に思った。
 
 でも、そう思うだけで、

 本当に、そう “思っただけ” で、

 実行に移す気なんて、さらさら無かった。
 
 今はもう、他人の夫となり、父となった兄。

 その人を、自分の都合だけで手を汚させる事なんて、許される筈が無いだろう。

 なのに。

 自分は必死に、己の欲望を抑え込んでいるというのに。

 この男はいとも簡単に、2人の間に立ちはだかる障壁をひらりと乗り越え、

 涼しい顔して、己の手を罪に染めてしまおうとする。


「ヴィクトリア……。ほら、俺と1つになろう」

 涙に滲んだ視界の先、

 自分に向かって幸せそうに微笑む兄がいて。

 その表情には、迷いなんて微塵も無くて。

「………………」

 兄から顔を背ける様に、ゆるりと金の頭を倒したヴィヴィ。

 羽毛布団の白い波間の先。

 レースカーテンの向こうには、

 柔らかな風にそよぐ、美しい湖面が広がっていた。



 赦して。

 どうか、赦して下さい。

 瞳子さんの旦那様なのに、

 匠斗のパパなのに。

 自分が匠海に “家族への裏切り行為” をさせている。

 でも、お願い。

 1度でいいから、

 今日だけでいいから、

 最期にもう一度だけ、お兄ちゃんを感じたいの。

 そうしたら、もう――。


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