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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章
自分でもそのボトルを確認し、成分も安息香酸塩と塩化ベンゼントニウムという、全くドーピングにかすりもしないものである事は確認していた。
「あ……、後で、見せてくれる……?」
兄を信用していない訳では無いが、やはり自分の目で確認したくて。
「勿論いいよ。アロエとカモミールエキスが入ってる、製薬会社の作っている物だから、本当に安心していい」
「そ、そっか……」
アワアワで隠れている胸に両の掌を添えたヴィヴィは、心底 安堵の表情を浮かべた。
が――、
「しかし、エロいなあ~? ヴィクトリアは。あんなに厭らしいこと一杯言って。「もっともっと」って際限無くおねだりしてきて?」
匠海の続けた、そのとんでもない意地悪に、
「ん゛なっ!? ……っ な、な――……っ!?」
灰色の瞳は真ん丸に見開かれ、小さな顔がみるみる真っ赤に火照っていく。
「ふ。お前は本当に色事に疎いな。 “性的興奮を駆り立てるお薬” なんて物が、合法的に手に入る訳がないだろう? それに、万が一、手元にあったとしても “俺の可愛いヴィクトリア” に合成麻薬やら脱法ハーブなんか、使う訳が無い」
今や耳まで真っ赤になった、ゆでだこ状態のヴィヴィを、匠海はこれでもかと からかって面白がっていた。
言われっぱなしの兄に言い返したくて、薄い唇が開いたり閉じたりを繰り返すが、何も返す言葉が出て来ない。
じゃあ、あの感覚は全て自分の思い込みだったというのか――?
あんなに中が熱く感じたのも、
弱い裏側がムズムズして、腰が揺れてしまったのも、
充血した粘膜が分泌した蜜を、はしたなく零してしまったのも。
膣内に無数の透明な虫が這い回っている錯覚を覚えてしまったのも。
全て、匠海の卑猥な誘導の言葉に煽られて、勝手に妄想してあんな状態に――?
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※安息香酸塩:食品添加物
※塩化ベンゼントニウム:医薬品等に使用される防腐剤