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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第1章  

 黒のクラッチバックを手に、屋敷の左隅に位置するマスターベッドルームから出たヴィヴィと執事に、

「リーヴぅ~~っ!」

 ひょっこり自室から顔を出したダリルが、執事を呼んで来た。

「………………」

 何故か無言のリーヴに、

「リーヴ、ダリルが呼んでるよ?」

 後ろを振り返ったヴィヴィは、執事に問い掛ける。

「……はい……」

 観念した様子でダリルに近付いて行くリーヴに、

「ねえ、リーヴ♡ こっちとこっち、どっちがいいかしらン?」

 そう言ってダリルが両手に持っていたドレスは、

 真っ赤なワンショルダーワンピに、深いスリットの入った黒のマキシワンピだった。

「どちらでも、宜しいかと」

 全くやる気のないリーヴの様子に、

「え~~、執事ならお嬢様の洋服選びにも、真剣に取り組めっての!」

 ダリルが憤慨して、ワンピを下げる手を激しく振る。

「お嬢様……でしたかね?」

 実はこの2人のやり取りは、日常茶飯事だったりする。

 リーヴの主=雇い主は、確かに双子だ。

 けれど、ダリルはきちんと生活費を毎月双子に収めていて、そこから執事の給与も賄っていると考えれば、

 彼(彼女?)もリーヴの主と言えなくも無いのだが。
 
 そしてダリルは双子の親友なのだから、もう少し丁重に扱っても良さそうだが。

 しかし、なんやかんや言いながら、ダリルはリーヴにちょっかいを出して楽しんでいるし。

 双子がいない時はリーヴもダリルを無視する事も無く、普通に接しているらしいので、双子はこの状態を放置していた。

「ダリル、黒のドレスは駄目……。露出多すぎ……」

 待ちくたびれたのか、階下から階段を上がってくるクリスが、目敏く指摘してくる。

 そんなクリスの格好は、黒のタキシード。

 歴史あるオックスフォード大学は、とにかく格式に五月蠅い。

 本日はフォーマルディナーなので、男女とも正装は当たり前。

 なんたって試験日には皆、正装にガウンの着用まで義務付けているのだから。

「は~い。やっぱりクリスったら優しいの! 好きぃ♡」

 素直にクリスの意見を聞き入れたダリルは、赤のドレスを抱き締めて喜んでいた。

「そりゃ……、どうも……」




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