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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第1章
やっとこさ支度を終えた3人は、玄関ホールに揃った。
「2人とも、第3学期……ううん、この1年間 本当にお疲れ様でした」
クリスとダリルを見比べたヴィヴィは、改まって2人の健闘を讃える。
彼らは落第もせず、今年の10月から3年生への進級が決まったのだ。
「ありがとう、ヴィヴィ……」
「ふふ、ありがと、ヴィヴィ!」
微笑み合った3人は、徒歩で仲良く古い街並みを歩き、5分で辿り着いたカレッジへと入って行く。
晩餐の会場は、常は食堂として使用されているウォルフソン・ホール。
歴史ある食堂は両脇に何枚もの肖像画が飾られ、威厳のある佇まいだ。
18:45の開始時間には、皆が規律正しく着席し。
食前酒からスタートしたディナーは、長い1年間を乗り切った達成感も手伝い、常に無い賑やかさだった。
「次のミカエル(1学期)からはヴィヴィも、本当に我々の一員だね?」
斜め向かいに座ったエイドリアン・ブリッグスは、美しく禿げ上がったオジサマで。
トレードマークの丸眼鏡の下、スマイルマークさながらの分かりやすい笑顔を浮かべ、ヴィヴィを見つめてきた。
「はい。それもこれも、ブリッグス教授のおかげです」
ヴィヴィがはにかみながら礼を述べたその人は国際私法の教授で、このカレッジでチューターを務めている。
今年の10月からの編入を希望し、3日間の口頭面接に臨んだヴィヴィに、ブリッグス教授は面接官の1人を務めてくれたのだ。
もちろん他にも面接官はいたけれども。
しょっちゅうカレッジで言葉を交わし、まるで娘の様に構ってくれる教授が面接官であった事で、
ヴィヴィは過度の緊張から解放され、実力を発揮する事が出来たのだ。
「いいや、勉強熱心で知的好奇心旺盛なヴィヴィと、僕達は一緒に学びたいと思わせてくれたからだよ。ね、ディナ?」
隣に腰かけている女性に話を振った、ブリッグス教授。
ディナ・ビシャラ――国際関係学の博士。
PPE:哲学、政治及び経済学 を専攻するヴィヴィにとっては、これからの2年間(3年制大学だから)、
彼女の元で多くを学ぶことになる。