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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章   

 先にシャワーで自分の身体の泡を落とした兄は、

 当惑した表情を浮かべる妹の身体も、隅々までシャワーで洗い流し。

 己の躰を拭きもせず、バスローブを羽織っただけの匠海に、

 ヴィヴィは大判のバスタオルで背中から包まれ、躰を拭われていた。

「ヴィクトリアは、変わらないな」

「え……?」

 俯きがちだった視線をふと上げれば、見下ろしてくる兄の瞳には、懐かしむ色が浮かんでいて。

「顔は少しシュッとしたけれど、童顔のままだし」

「……ほっといて」

 今更言われなくとも、自分は英国の血が濃いにも関わらず、何故か顔の造りが幼い事は周知の事実だ。

「この可愛らしい柔らかな胸も、前と変わらない」

 言外に「 “つるぺた” のまんまだな?」と言われ、大きな瞳が剣呑に細まる。

「ますます、ほっといてっ」

 21歳になっても、この状態なのだ。

 もう胸も尻も成長しないであろう現実は、20歳になった時に諦め、既に受け入れた事だ。

 匠海の手からバスタオルを奪い、薄っぺらな躰に巻き付ける。

 大きな鏡に写りこむ自分は、少し傷付いた顔をしていた。

 濡れてしまった毛先を、新たなタオルで拭おうと伸ばした手を、

 兄の大きな掌が掴んで制し、替りに金の髪を拭い始めた。

「お前だけは、時が経っても変わる事は無いんだな。

 細い腰も、長い手脚も。全部 綺麗なままだ」

 どこか夢心地に囁く匠海には、

 本当に “今の自分” が目に入っているのだろうか。

「………………」

 つい先程までは離れ難く、永遠にベッドの上で兄に抱き寄せられていたかったのに。

 何故だろう。

 今この場にいるヴィヴィの頭の中には「今すぐ離れろ!」という、警告が鳴り響いていた。

「ああ、そういえば。唯一、変わっていたところもあるか」

 オフホワイトのタオルで、丁寧に長い毛先を挟んでいた兄が、ふと気付いた様に付け加える。

 その思わせぶりな言い回しに、

「…………な、に?」

 どうしても気になった、兄の気付いた “自分の変化” を、恐々 聞き返せば。

「ああ。ヴィクトリアの中は成長していた」

「え?」

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