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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章   

 けれど、そう思う一方で、
 
 元は自分の恋人であった男を、

 望まぬ形で “自分以外の女と共有” させられているという、屈辱をも覚え込まされ。
 
 そうして、

 兄は妹の隅々まで味わって、

 蹂躙して、

 指1本でさえ自分のものだと、ヴィヴィの精神に刻み込み、

 何もかもを喰い散らかして行った。

 そんな嵐の様な情事の中、
 
 何よりもヴィヴィの心を抉ったのは、

 こんな凌辱まがいの事をされても、

 躰だけは はち切れんばかりの悦びに震えていた、

 己の醜悪さ――だった。







 ずっと夢と現実を行き来していた。

 意識がある時は、

 ただただ善がり声を垂れ流し、
 
 朦朧としている時は、

 肌のどこかしらには、兄を感じていた。
 


 その匠海がベッドルームを後にした気配を読んだヴィヴィは、

 暗闇の中、手探りでバスローブを手繰っては羽織り。

 身を横たえていたベッドから、迷い無く這い出た。
 
 大事に大事に抱いてくれたという事は、嫌というほど解かった。

 カーペットの上、脚をずるずると引き摺ってしまうのは、

 抱き潰されて躰が痛い訳では無く、

 数え切れないほどの快楽ばかりを植え付けられて、

 ただ、腰が言う事を効かないだけで。

「………………」

 近くに兄の気配が無いか、耳をそばだて。

 そして注意深く開錠したのは、レースのカーテンだけが引かれていた、ウッドデッキへと続くサッシ。

 密閉性の高い窓ガラスは、両手で開けようとするヴィヴィに、一瞬の抵抗を見せたが、

 ふっと空気の揺れる音だけをさせ、難なく人1人分が出られるだけ開け放てた。

 10℃に満たない外気温に、思わずバスローブの前をかき合わせ、

 裸足のまま、月夜に鈍く浮かび上がるウッドデッキへと踏み出す。



 もう、

 もう、駄目だ。
 
 私は “ここ” にいてはいけない。



 ひんやりと足裏を濡らすのは、夜露か。

 視界の先、微かに波打つ湖面を認め、

 足音を殺しながら、一歩ずつ近付いていく。


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