この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章   

 あの時……。

 あの時、私が “サロメ” さえ、選ばなければ、

 自分の事を女として見て欲しいとさえ、願わなければ、

 恋人になりたいと、分不相応な望みを抱かなければ、

 そうすれば。

 匠海はきっと、血の繋がった妹である自分なんて、

 異性として見る可能性など、皆無だったのに――。

「愛している、ヴィクトリア……。

 俺の事が何一つ信用出来なくても、

 頼むから、その気持ちだけは、心に留めておいて――」

 こめかみを伝い落ちた涙は、じわじわとオフホワイトのシーツにシミを広げていく。

 けれど、この全身を針のムシロの様に苛む罪悪感は、

 きっと何枚のシーツをぐっしょりと濡らしても、消える事は無いのだろう。

 なのに、

 自分をこんなにも苦しませるのは、目の前の匠海だというのに、

 どうして自分は、

 その兄に縋り付いて涙を流しているのだろう。





 泣き疲れ、いつの間にかうとうとして。

 そしてまた、嗚咽を殺しては泣いているヴィヴィを、

 匠海はずっと抱き寄せ、その頭と背中を撫でていた。

 そんな長い夜を超え、

 とにかく1つだけ、はっきりした事はといえば、

 自分は

 “己の命のともし火ひとつ、思い通りに消す事すら赦されていない”

 という現実だった――。







 夜が明ければ日は昇る。

 そんな当たり前の事実に、落胆を隠せなかった。

 8月3日(木)。

 昨日、寝ている間に匠海に連れて来られた、未だ何処かも解らぬ土地。

 まだ1泊しか滞在していないというのに、ヴィヴィはもう何週間もここに隔離されている気がしていた。

 周りは刻々と時を刻み、前へと進んでいるのに、

 まるで自分達兄妹だけが、この場に取り残されたような感覚。

 だというのに、

 泣き疲れてぐったりしていた妹を風呂へと運び込み、躰の隅々まで愛でながら洗い上げていた匠海は、普段と何ら変わりなかった。
 
 身体を拭き上げられ、髪を乾かされ。

 あまつさえ歯磨きまで手伝おうとしてきた兄を、ヴィヴィはさすがにバスルームから追いやった。

/1163ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ