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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章   

 ここ2日間。

 ヴィヴィは匠海がノートPCを弄っている姿しか、見ていなかった。

 もしかしたら自分が寝ている間に、両親や家族に連絡を取っていたのかも知れないが。

「……何を、考えているの……?」

 思わず薄い唇から洩れた疑問。

 けれど、匠海は微かに身じろぎしただけで、すーすー気持ち良さ気な寝息を立てている。

 ああ、本当にこの人は “宇宙人” だ。

 何を思っているのか、何を考えているのか、全然 解らない。

 腕の中、しばらく兄を見上げていたヴィヴィは、何を思ったのか。

 寝ている匠海の人差し指の先っちょに、自分の人差し指の先端を触れ合わせる。

 そして、目蓋を伏せたヴィヴィは、何やらぶつくさと念じ始めた。

「Почему вы женились?」

「Вы удачные сейчас?」

「Вы любите меня?」

 不吉な念仏を唱え終え、目蓋を開けば、

 あまりにしつこくしていたからか。

 視界に入った匠海の瞳が、寝起きでぱちぱちと瞬きながらも、こちらを見ていて。

「……何、してるんだ?」

 寝起きの第一声に返された、答えは、

「……交信……(-_-)」

 匠海 = 宇宙人

 その等式が頭の中で揺るぎ無き物として成立しているヴィヴィは、至極真面目に答えたのだが。

 一瞬、きょとんとした匠海。

 「ぶはっ」と噴き出したかと思うと、

 その後はしつこく、腹を抱えて笑い転げていたのだった。



「……交信……☞ ☜」







 出来立てほやほやのブレックファースト(ヴィヴィも野菜洗った)を、ダイニングで採り終え。

 食洗機に食器をセットして戻って来た妹を、匠海は手招きして呼び寄せた。

「ロンドンのグランマがね、酷く憔悴しているらしいんだ」

「え? どうして?」

 たった4日前。

 エディンバラへと移動する篠宮御一行様を、日本人の祖母は元気良く見送ってくれていたのに。

 こてと首を傾げた妹に、匠海は少し逡巡したのち、

「執事を紹介したのは、菊子さんだったろう?」

 そう、祖母の心労の原因を口にした。

「………………」

「許してあげて欲しい」

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