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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章   

「……帰るんでしょう?」

 もはや胡乱な瞳を隠しもせず匠海へと向ければ、兄はくくっと苦笑していた。

「そう、そっちが表だ」

 自ら着けてみたいと申し出て、ヴィヴィは兄に教わり避妊具を装着させる。

「ふ……。またヴィクトリアに悪いことを教えてしまった」

 そう呟いた匠海は何だか嬉しそうで。

 「困った人」と思いながらも、ヴィヴィは纏っていたバスローブを肩から引き抜き、床へと落した。

「ああ、綺麗だよ、ヴィクトリア」

 切れ長の瞳を細め、妹の肢体を崇めてくる兄。

 ソファーに腰掛けた兄を跨ぎ、その座面に両膝立ちになったヴィヴィは、

 ゆっくりと時間を掛けて、少しずつ兄をその身に招き入れた。

「ヴィクトリア……。ああ、夢みたいだ」

 背凭れに背を預けた匠海の腰の上、リズミカルに上下するヴィヴィは、じっと兄の顔を見下ろしていた。

 幸せそうな顔。

 どうでもいい事を囁いてくる、エロさ全開の顔。

 うっとりと、互いの熱に身を委ねた顔。

 ひたすら我慢をして耐え忍ぶ顔。

 そして、

「~~っ あぁっ ヴィク、ト……リアっ」

 自分の中にゴム越しに精を解き放つ、その瞬間の顔まで。

 全てを脳裏に刻み付け。

 そして時を同じくして、ヴィヴィも一緒に天国を垣間見る。

「ふぅ……っ お、にぃ……っ ちゃ……っっ!!」

 ヴィヴィの躰が落ち着くまで、匠海はずっと

「愛しているよ」

「凄く気持ち良かった、ありがとう」

 そんな言葉を耳元で囁いてくれていた。

 今一度、ヴィヴィは目蓋を閉じ、自分を深く貫く匠海を全神経を使って感じ取る。

 これが、本当に最期の最期。
 
 これで、自分は生きていける。

 もうこれ以上、

 匠海ばかりに、罪を犯させてはいけない。

「じゃあ、屋敷に戻れるね?」

 一緒に湯を使い、洗い合いっこをして。

 そして出発の準備を整えたヴィヴィに、匠海はそう念押ししてくる。

 こくり。

 今度は迷いなく首肯したヴィヴィに、

 兄はほっとした様な残念な様な、どっち付かずな表情を浮かべていた。
 
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