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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

「な、泣いたら、グランパの話、聞けなくなっちゃうぅ~~っ」

 名残惜しそうに本音を漏らしたヴィヴィに、執事は以前と変わらぬ主の可愛らしさに微笑し。

 両親、祖夫、ヴィヴィ、そしてダリルがソファーに腰掛けるのを見計り、茶の用意をしにキッチンへと下がってしまった。

「さて、ヴィヴィ……。辛いかも知れないが、どうか出来る限り、グランパの話を聞いておくれ――」

 どうして父方のオーウェン家の祖父が、ここにいたのか。

 その疑問はすぐに明らかとなる。

 孫娘を凌辱しようとした元執事のリーヴは、ダリルが呼んだ管轄区である、セイント・アデレート警察署へと連行された。

 だが、被疑者取り調べは、そこでは成されなかった。

 ダリルから30分遅れて屋敷に帰宅したクリスが、エディンバラにいる父・グレコリーへとすぐに連絡を取り、

 そしてグレコリーは、ここ英国で有識者として幅を利かせている祖父を頼った。

 ジョン・ブレア英警視総監。

 彼はオックスフォード大学出身であり、祖父の同窓生でもあり竹馬の友でもあった。

 日英両国のみならず、世界中で愛されている、現役フィギュア選手の醜聞。

 そんな物が明るみになれば、ヴィヴィの選手生命は断たれてしまう。

 例えそれが、本人に非が一切無かったとしても。

 フィギュア・スケートとは “魅せるスポーツ” であるから。

 よって――、

 英国の警察組織を成す、警察委員会、内務大臣、警察本部長。

 それら全てに手を回した警視総監は、リーヴの身をロンドンへと移送し。

 自分の管轄下であるスコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)にて、内密に取り調べを遂行したらしい。

 容疑はもちろん、強姦致死傷罪。

 但し、被害者はヴィヴィ本人ではなく、他の女性を仕立て上げて。

 そして、容疑者であるリーヴも深く猛省しているらしく。

 元主以外の女性が被害者となる事について、すぐに受け入れ、

 己の犯した罪も、全て洗いざらい自白したという。

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