この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
「な、泣いたら、グランパの話、聞けなくなっちゃうぅ~~っ」
名残惜しそうに本音を漏らしたヴィヴィに、執事は以前と変わらぬ主の可愛らしさに微笑し。
両親、祖夫、ヴィヴィ、そしてダリルがソファーに腰掛けるのを見計り、茶の用意をしにキッチンへと下がってしまった。
「さて、ヴィヴィ……。辛いかも知れないが、どうか出来る限り、グランパの話を聞いておくれ――」
どうして父方のオーウェン家の祖父が、ここにいたのか。
その疑問はすぐに明らかとなる。
孫娘を凌辱しようとした元執事のリーヴは、ダリルが呼んだ管轄区である、セイント・アデレート警察署へと連行された。
だが、被疑者取り調べは、そこでは成されなかった。
ダリルから30分遅れて屋敷に帰宅したクリスが、エディンバラにいる父・グレコリーへとすぐに連絡を取り、
そしてグレコリーは、ここ英国で有識者として幅を利かせている祖父を頼った。
ジョン・ブレア英警視総監。
彼はオックスフォード大学出身であり、祖父の同窓生でもあり竹馬の友でもあった。
日英両国のみならず、世界中で愛されている、現役フィギュア選手の醜聞。
そんな物が明るみになれば、ヴィヴィの選手生命は断たれてしまう。
例えそれが、本人に非が一切無かったとしても。
フィギュア・スケートとは “魅せるスポーツ” であるから。
よって――、
英国の警察組織を成す、警察委員会、内務大臣、警察本部長。
それら全てに手を回した警視総監は、リーヴの身をロンドンへと移送し。
自分の管轄下であるスコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)にて、内密に取り調べを遂行したらしい。
容疑はもちろん、強姦致死傷罪。
但し、被害者はヴィヴィ本人ではなく、他の女性を仕立て上げて。
そして、容疑者であるリーヴも深く猛省しているらしく。
元主以外の女性が被害者となる事について、すぐに受け入れ、
己の犯した罪も、全て洗いざらい自白したという。