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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
祖父から手渡された供述調書の写しに、目を通したヴィヴィ。
内容は事細かに記されており、途中気分が悪くなったが、
ダリルに肩を抱いて貰いながら、なんとか全てに目を通す事が出来た。
タイで手首を拘束され、自由を奪われたこと。
躰を弄られた、詳細な個所。
口付られ、指を入れられた場所。
口淫を強要された事実。
そして、言葉の暴力。
ヴィヴィが正当防衛として、ペーパーナイフを持ち出したこと、その顛末。
全て、リーヴが供述した事と相違なかった。
孫娘が真っ青になりながら調書を確認し終え、祖父へと戻せば、
受け取った祖父はヴィヴィを引き寄せ、大切そうに抱き締めた。
「お前はこれからも、何の心配も無く、普通に生活出来るんだよ。ヴィヴィ」
「……私……、スケート……、続けて、いいの……?」
留学よりも私生活よりも、それが一番重要で。
恐るおそる確認するヴィヴィに、
「ああ、勿論だとも」
目尻の皺を深めながら、祖父は大きく頷いた。
「てか、当たり前でしょ! ヴィヴィに非なんて、ひとっっっつも無いんだから!!」
ジュリアンが、両の拳を固く握り締めて主張すれば、
「お前は今まで通り、スケートと勉強に明け暮れ、ヴィヴィらしく元気に生活すればいい」
娘を安心させようと、柔らかな微笑を湛えたグレコリーが、ヴィヴィの欲しかった答えをくれた。
「グランパ……っ 私、何て言えばいいのか……、どうお礼をすればいい?」
本来ならしなくていい苦労を、この祖父にさせてしまった。
そして自分の将来を全力で守ってくれた皆に、自分はどうすれば報いられるのだろうか。
「礼なんて必要無い。ただ……」
そこで言葉を濁した祖父は、ヴィヴィを真っ直ぐに見つめ、眉尻を下げた。
「どうか、菊子を許してやって欲しい。ずっと自分を責め続けて、昨日倒れて、臥せってしまってね……」
リーヴを執事にと紹介した父方の祖母・菊子が、そんなに憔悴しているとは知らず。
「今からすぐ、ロンドンの屋敷に行く」と言い張るヴィヴィを、両親は何故か止めた。