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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
「ヴィヴィ、頼むから、ダッド達と日本へ帰ろう?」
父のその思いがけぬ要求に、
「え……?」
「日本へ何しに帰るの?」と、不思議そうに首を捻るヴィヴィ。
「もう ショーンコーチにも、帰国の許可は貰ってあるの。「離れていても出来る限り協力する」って言って下さっているわ」
母の続けた言葉に、ヴィヴィは更に首を捻る。
「え? な、何で? 私、もうすぐ、ショーあるし……。それにシーズンインまで、もう……」
25日後には英国で初となる、双子主催のショーが。
約2ヶ月後には、もうシーズン初戦が迫っていた。
それでなくても先月は日本に入り浸っていたので、いい加減に本腰を入れてショーンコーチの指導を仰がないと、シャレにならない。
「マム……私……」
「帰国は出来ない」と断ろうと口を開いたヴィヴィに、ジュリアンはソファーから立ち上がり。
娘の座るソファーの前へと膝を付くと、膝に置いていた細い両手を、己のそれで包んだ。
「お願い、ヴィヴィ。マムの我が儘を訊いて? 1週間でいいから、日本に帰りましょう? あんただって、この屋敷……、嫌な事を思い出して、辛い想いをするかも知れない」
「ヴィヴィ、私からも頼むよ。少しの間でいい。ダッド達の傍にいて欲しい」
母と父のその懇願に、ヴィヴィは当惑する。
確かに、1人娘が強姦未遂にあい、しかも自殺未遂を2回も(正確には3回)したと聞かされれば、
両親が片時も手離したくないと思うのは、当然といえば当然で。
そして、本来の旅程であれば、昨日 帰国の途に就く筈だった、両親と匠海に取ってみれば、
これ以上帰国日を先延ばしして仕事を休み、オックスフォードで娘の傍にいる事も叶わないのだろう。
(……どう、しよう……)
一番、冷静に判断が出来そうな人物――クリスの姿を求め、
ヴィヴィはリビングと続くダイニングに視線を向けるも。
(……あれ……?)
そう言えば、祖父の説明を聞いている最中も、兄2人の姿は見えなかった。