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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

「そうか。グランパの説明は聞いたか?」

「うん……。調書も、読んだ……」

「大丈夫か?」

 悪夢を思い出して苦しんでいないかと、20cm下の小さな顔を覗き込んでくる兄に、

 ヴィヴィは少し腰が引けながらも、こくりと頷いて見せた。

 自分の記憶は今やもう、匠海だけのものになっているから。

「俺はもう、ロンドンへ行くよ」

 さっと腕時計に視線を走らせた匠海が、ヴィヴィの脇を通り階段へと向かう。

 自分に付き合っていた2泊3日の間、匠海は仕事をする状態に無かったろう。

「そう……。運転、気を付けてね?」

 振り返って、兄の広い背中にそう声を掛ければ、

「ありがとう、ヴィヴィ。じゃあな」

 あまりにもあっさりとした返事を寄越した匠海は、ちらりと振り返っただけで。

 その2分後には、屋敷を発つ車のエンジン音が聞こえていた。

 そう言えば、その妻子の姿はここには無かった。

 いつ戻るか分からないヴィヴィを英国で待つよりも、日本に戻らせたのだろう。

 特に瞳子は、自身もフラワーアーティストとしての仕事が、立て込んでいるであろうし。

「クリス……」

 部屋の真ん中に立ち竦んだ状態の双子の兄に、ヴィヴィは静かに声を掛けた。

「……ダッドとマムに「日本に帰って来い」って言われた……?」

 こちらに視線を寄越さず尋ねてくるクリスに、ヴィヴィは灰色の瞳を当惑した様に彷徨わせ。

「ん……」

 小さく頷いた妹に、クリスはやっとこちらへと顔を向けてきた。

 自分に良く似たその顔には、何とも言えない表情が浮かんでいた。

 怒っているような、落ち込んでいるような。

 ほっとしているような、泣き出してしまいそうな。

「そう……。申し訳無いけれど、僕はこっちに残る……」

「あ、うん……。それは、勿論……」

 クリスは自分と一緒に日本へ帰国しない。

 それはそうだろう。

 25日間も日本でショーに出続け、

 やっと英国へ戻れたと思えば、両親にロンドンとエディンバラへ拉致され。
 
 正直、双子はショーンコーチの指導を受けれない日が続いていたのだ。

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