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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

 匠海はきちんと避妊してくれたし、このピルではアフターピル(緊急避妊薬)の意味は成さないのだが。

 何故か、そうしなければいけない気がして。

「朝比奈……」

 コップを戻す主から、執事は受け取り、

「はい、お嬢様」

 折り目正しい返事を寄越すその人を、ヴィヴィは真正面から見つめた。

「私に仕える事は出来る?」

 本当の気持ちを知りたかった。

 彼がここオックスフォードに居るという事は、両親が朝比奈を「双子の執事に戻す」と決断したからだろう。

 双子が3歳の頃から傍に仕えていた執事なら、裏切ったり、我々を失望させる事は、絶対に無いであろうから。

 そしてヴィヴィにとっても、もう朝比奈以外の執事は傍に置けないだろうからと。

(私は、大丈夫……。私は、朝比奈 以外、もう考えられ無いから。けれど……)

 朝比奈は違う。

 執事は主の全てを知っている。

 どれだけの罪を、過去に犯してきたか、を――。



 ヴィヴィが何故、全幅の信頼を置く朝比奈を、日本に置いてきたか。

 その理由の1つは、

 朝比奈に甘えずとも、1人できちんと立てる大人になりたかったから。
 
 そして、もう1つの理由は、

 “執事” という職業に誇りを持つ彼に対し、

 愚弄し侮辱する行為をした自分を、どうしても許せなかったから。



(私は、朝比奈を “道具扱い” した……)

 執事にとってみれば、信頼や尊敬の念を持てぬ相手に仕えるのは、苦痛以外の何物でもない。

 果たして自分は、まだ朝比奈の主として見て貰えるのだろうか?

「どうか、私をお2人の傍に置いて下さい」

 朝比奈はそう即答してくれた。

 けれど、それが本音かどうか解りかねるヴィヴィは、じいとその顔を見つめていた。

「私の居場所は、クリス様とヴィクトリア様のお傍です。

 お2人が時に挫折し、時に苦悩しながら、それでも前へ向かって進もうとされるお姿――

 それを傍で支え見守る事に、私は何物にも替え難い、無上の喜びを感じるのです」
 
 きちんと自分の目を見て言ってくれた朝比奈に、ヴィヴィの表情が自信無さそうに曇る。

「朝比奈……。本当に……?」

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