パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第1章 　

　ちらりと振り返った先――クリスが黒ハットの下、何故か拗ねた表情を浮かべているのに気付く。

　調子に乗り過ぎたかと肩を上げて見せたヴィヴィは、そのサングラスを羽生の小さな顔に掛けさせ、

　新婦に「ごめんなさいネ」とひらりと手を振ったのち、双子の兄に手を引かれて高砂席を降りる。

　延々と続いていたバンドネオンの渋い伴奏が途切れ、

　次いで響いたのは　かの有名な――リベルタンゴのイントロ。
　
　赤シャツに黒スーツ・黒ネクタイ姿のクリスが、右手でハットを押さえて俯く。

　その背後から這わされた細い両腕は、レースの手袋越しに妖艶にスーツの上を這って行き。

　クリスの背後から現れたヴィヴィは、赤く潤う唇で蠱惑的に嗤う。

　ターンしながらクリスの胸に収まったくねる腰を、撫でさする大きな両掌。

「キャ～～っ！？　エ、エロいっ」

　そこら中で上がる驚嘆の声。

　奏で始めた弦の響きに反応し、２人の両腕が上へと伸ばされていく。

　金色の巻き髪を伝い落ち、剥き出しの肩をなぞっていく骨ばった指先。

　キレのある動きでヴィヴィの腰を捉え、その身体を外へ向けて回転させる。

　軽やかなターンを繰り返すヴィヴィの手を掴み、双子はホールドを組んだまま腰を落とし、

　互いの片脚を両サイドにめい一杯広げ、至近距離で熱っぽく見つめ合う。

　ゆっくりと立ち上がり、互いに踏み込むステップ。

　自分と瓜二つの顔を見つめながら、剥き出しの脚を魅せ付けるように、その周りを色っぽく一周した妹を、

　兄はその華奢な両肩を押し下げるように腰を落とさせ、

　赤いスカートから剥き出しになった横へ延びた細い脚を、踝から膝へ、膝から太ももへと、細く大きな掌が辿っていく。

　その手付きは、何だかいつもと違っていて。

（ク、クリス……、なんか触り方、えっち……っ）

　どこか粘着質な触れ方に、後ろにある兄の片頬にうっとりと掌を添え、赤く濡れた唇を喘ぐ様に開くヴィヴィ。　

　悲鳴に近い歓声を聞きながら、細やかなステップを挟み、片脚を後ろへと振り上げる。

　後ろへと沿った上半身と、振り上げた片脚が触れそうなキックに、どよめきが起きた。