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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第1章
ここからは大胆なステップで魅せていく。
上半身を密着させた双子はホールドを組み、灰色の瞳を合わせながら大きくステップを踏み、
時折ガンチョと呼ばれる、相手の脚に膝を折りながら絡めさせる技も披露する。
ホールドを解き外へと開いたヴィヴィをクリスがひっぱり、
長い裾をはためかせながらターンを繰り返す妹を受け止めた兄は、その身体を自分の膝の上にしな垂れかからせる。
一方、凭れ掛った兄の脚と腰に腕を回したヴィヴィは、なんとその股の間を脚先から潜り抜けた。
引っ切り無しに上がる感嘆の声。
床にしどけなく座り込んだ妹を、兄が力強く引き起こす。
ホール中に流し目を送りながら、ハットのつばを指先で辿るクリスに、
「どこ見てんの? 私はここよ」と挑発的な視線を投げかけながら、
自分の脚を撫で上げつつ、上体を起こしたヴィヴィ。
片手で己の腰を撫でながら、キレのある動きで反対の脚を頭上まで振上げ、180度 開脚して降ろす。
――ちなみにパンツが見えるとか、そんな事を気にしていては、タンゴは踊れない。
ここからはまた、足技の応酬。
互いの脚を絡ませつつ、鍵の様に引っ掛け合う――これを上下左右にキレッキレで行い。
脚で床を掃くように、兄の靴が妹のヒールの足に添えて運ばせていくバリーダ。
それらを互いの額を寄せ合いながら披露すれば、会場内のボルテージは更にヒートアップして。
そうなると一応 表現者の端くれである双子は、愉しくてしようがなくなる。
メティーダという、ステップを踏むヴィヴィの脚の間に、クリスが脚を抜き差しする高難度の足技。
――何個もの青あざをこさえながら、習得したテクニックだ。
そして最後、
トラバーダ――腰に回された掌で互いの腰を密着させ、兄の腰の高さに上げた右太ももを掴まれたまま、
後退する兄によって、妹の身体は左の爪先を床に滑らせながら移動していく。
赤く染められた指先がクリスの金の後れ毛をまさぐれば、黒ハットの下、灰色の瞳が熱く潤み。
その熱に当てられた様に、薄く赤い唇からも熱っぽい吐息が漏れる。