この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
『氷の上に乗ると “魂の浄化” でもされるのか?』
2面あるリンク。
フィギュア用の旋回型カメラが設置された、氷の平野を前にし、
ヴィヴィの頭に過ったのは、そんな言葉だった。
匠海を穢した後、16歳の自分に浴びせ掛けられた、その嘲笑。
そうあって欲しいと、今は切実に願う。
せめて、氷の上だけでも、
嘘を吐く必要の無い、
“本当の自分” でいられたらいいのに――
8月5日(土)。
7:00にオックスフォードを出発した、ヴィヴィ。
両親と共に辿り着いたのは勿論、父の生家・オーウェン邸。
8:30とまだ早い時間だったけれど、祖母の寝室に通して貰えたヴィヴィは、ベッドに臥せっていた菊子を目にし。
一目散に駆けて行って、薄い胸の中に抱き寄せた。
「ヴィヴィ……っ ごめんなさい。ごめんなさいっ」
孫娘に謝り続ける祖母の方がよっぽど、当人よりも憔悴しきっており。
ヴィヴィは何度も「大丈夫」「見るからに元気でしょ?」と幾度となく繰り返し、
菊子の不安と後悔の芽を、根こそぎ摘み取った。
「1週間で帰って来るよ。戻ったら、お庭の青虫退治、付き合うよぉ~~(°ཀ°;)」
ちょっとでもニョロっとした生き物(蛇とかね)が苦手なヴィヴィが、決死の覚悟で誓いを立てれば、
「まあ、ヴィヴィったら!」
いつも嫌がるお手伝いを自ら買って出た孫娘に、驚きの声を上げる。
「マイクロトマトも、そろそろ赤くなってそうだし?」
自分の為に菊子が育ててくれている、トマト専用ミニ・ビニールハウス。
前回見た、ブドウの様な房成りのマイクロトマト、を思い出したヴィヴィ。
まるでペコちゃんの様に、ぺろっと唇の端から舌を出して見せれば、
「うふふっ ああ、ヴィヴィ、愛しているわ!」
おどけた孫娘に、愛おしげに両腕を伸ばしてきた祖母。