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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

 もう一度抱き寄せたヴィヴィは、うっとりと囁き返す。

「私もよ、愛してる。次は、お日様の下で笑ってるグランマに会えるの、楽しみにしてるね?」

 いつも暖かな日光の香りを纏った祖母と、トマトの収穫をするのを楽しみに、

 ヴィヴィと両親は、オーウェン邸を後にした。






「ヴィヴィ、大丈夫か?」

 昨日ぶりに対面した匠海の問いに、ヴィヴィは「ん」と短く頷いて返した。

 ロンドン・ヒースロー空港、航空会社のラウンジの一角。

 両親と匠海とヴィヴィ、その4人が同じソファーセットを取り囲んでいた。

「クリスは?」

 姿の見えない弟の所在を確かめる兄に、ヴィヴィはまた「うん」と頷くだけで返事を濁す。

「お兄ちゃんこそ、大丈夫……?」

「ん?」

 コーヒーカップに口付けながら、見返してくる匠海は元気そうだけれど。

「昨日、ちゃんとベッドで寝た?」

「ふ……。飛行機の中で爆睡するから、心配するな」

 やはり、昨日は寝る間も惜しみ、ロンドン支社で残務処理に追われていたらしい。

「……あ、あの……」

 両親がイチャイチャする傍ら、ヴィヴィはおずおず続ける。

「どうした?」

 不思議そうに水を向けてくる兄に、

 ソファーに腰掛けたまま居住まいを正した妹は、ぺこりと金色の頭を下げた。

「……ありがと、その……。色々と……」

 夜通し運転して、エディンバラから駆け付けてくれたこと。

 滞在したヴィラや食料等の手配をしてくれたこと。

 忙しい身の筈なのに、自分の為に2泊も費やしてくれたこと。

 そして何よりも、

 この世に自分を繋ぎ止めてくれたこと――。
 
 それら全て、感謝しても仕切れない事に対し、ヴィヴィは初めて礼を口にした。

「どういたしまして」

 そう、さらりと返してきた匠海。

 兄にとっては、もう興味の無い過去の事なのか、

 その後はずっとノートPCを弄っていて。
 
 手持無沙汰になったヴィヴィは、デレデレの両親越しに、窓の外を飛行機が離陸していく様子を見つめていた。

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