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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
「うんっ クリスも体調 気を付けてね?」
弾ける笑顔で会話を終えると、代わりに画面に映し出された柿田トレーナーに、
『じゃあ、ショーンコーチとのライブレッスンは、5時間後からだね? また後で』
英国とのSkypeは切られてしまった。
少々ホームシックに掛かりながらも、ヴィヴィは黙々と与えられた練習メニューを熟していったのだった。
19時を回った頃。
驚いた事に、父が料理長と一緒にリンクを訪ねてくれて。
居合わせたコーチ陣と両親と一緒に、付属のカフェテリアで夕食を摂れる事になった。
「ごめんね、ダッド。忙しいのに」
そう言いながらも、やはり嬉しくて。
にんまりしてしまったヴィヴィに、グレコリーも灰色の瞳を細める。
「いいや、日曜だしね。ヴィヴィは時差ボケ、大丈夫か?」
「うん。午前中いっぱい、寝てたもん」
煮しめのレンコンを頬張るヴィヴィは、「やっぱり、料理長の味が一番♡」とうっとりした。
和やかなディナーも終盤に入った頃、
「あら、瞳子さんじゃない!」
ヴィヴィの隣に腰掛けていたジュリアンが、明るい声を上げ、カフェテリアのエントランスを振り返った。
「お母様、こんばんは。お邪魔しています」
よく通る落ち着いた声に、ヴィヴィも振り返る。
「……瞳子、さん……」
義姉が義妹に気付き、顔を綻ばせて寄って来た。
「ヴィヴィちゃん! 会いたかったわ~~っ」
椅子から立ち上がったヴィヴィに、瞳子はがばっと抱き着いてきて。
「え……? あ、もしかして、私に会いに?」
背中にコーチ陣の視線を感じながら、ヴィヴィは抱擁を解いた瞳子を見上げる。
身長170cmの長身で6cm位のヒールを履けば、ヴィヴィよりも10cm以上高くなって。
「私、昨日、ブライダルの仕事あって。どうしても先に帰国しないと、ならなかったの。ごめんなさいね?」
「いえそんな! どうも、ご心配をお掛けしました」
謝る必要など一つも無い事に謝罪してくる義姉に、ヴィヴィは焦って返し。
「あの、もう、元気です。大丈夫、なので。えっと……」
「気を使う必要は無い」と伝えたいのに。
しどろもどろになるヴィヴィに、瞳子はにっこり微笑んで頷いた。