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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

「あ、そう言えば匠海さん。「匠斗を連れて、数日 実家に戻る」って言ってらしたわ?」

 瞳子の口から匠海の名を聞いた途端、どくんと全身が戦慄いた。

「……え……?」

「ふふ。私、今週末、沖縄に行かなければならないの。国際会議のフラワーデザインを請け負っていて」

「あ、ああ。そう言えば……」

 帰国時、ファーストクラスのテレビで「G8サミットの為、各国のVIPが沖縄に集まる」というニュースを目にしていた。

(そんな、大きなお仕事……、凄い、な……)

 経済的に自立し、社会的にも求められる資質を合わせ持ち、かつ、結婚も出産も両立している理想の女性。

 兄の妻はそんな出来過ぎた人だった。

 失念していた。

 ここ1年3ヶ月、兄夫婦には本当に会っていなかったから。

 そういう情報を、意図してか、頭の中から排除するようになっていて。

 何故か、細い肩にずっしりとした重みを感じ。

 微かに眉根を寄せたヴィヴィは、

(……背後霊……憑かれた……)

 そう本気が冗談か判らない事を零し、何とか気を紛らわせた。

「匠斗が賑やかかもしれないけど、まあ、すぐ寝る子だから」

 眉尻を下げて笑う瞳子に、ヴィヴィも瞳を細めて頷いた。

「ふふ。分かりました。どうぞ、お気を付けて」

「ありがとう。あ、忘れるところだったわ。これ、ヴィヴィちゃんにプレゼントしようと思って」

「え? プレゼント……?」

 義姉に渡された正方形の紙袋の中には、透明な容器に入った黄緑色の花に溢れていた。

「これ……?」

「フラワーバスに良いかなと思って。この黄色の花は 夜来香(イエライシャン)と言うの。読んで字の如く、夜に薫るのよ。後は、ライムという名前の薔薇ね」

 娘と義娘の会話に興味を引かれたらしいジュリアンが立ち上がり、ヴィヴィの持つ紙袋を覗いてくる。

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