この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
「あ、そう言えば匠海さん。「匠斗を連れて、数日 実家に戻る」って言ってらしたわ?」
瞳子の口から匠海の名を聞いた途端、どくんと全身が戦慄いた。
「……え……?」
「ふふ。私、今週末、沖縄に行かなければならないの。国際会議のフラワーデザインを請け負っていて」
「あ、ああ。そう言えば……」
帰国時、ファーストクラスのテレビで「G8サミットの為、各国のVIPが沖縄に集まる」というニュースを目にしていた。
(そんな、大きなお仕事……、凄い、な……)
経済的に自立し、社会的にも求められる資質を合わせ持ち、かつ、結婚も出産も両立している理想の女性。
兄の妻はそんな出来過ぎた人だった。
失念していた。
ここ1年3ヶ月、兄夫婦には本当に会っていなかったから。
そういう情報を、意図してか、頭の中から排除するようになっていて。
何故か、細い肩にずっしりとした重みを感じ。
微かに眉根を寄せたヴィヴィは、
(……背後霊……憑かれた……)
そう本気が冗談か判らない事を零し、何とか気を紛らわせた。
「匠斗が賑やかかもしれないけど、まあ、すぐ寝る子だから」
眉尻を下げて笑う瞳子に、ヴィヴィも瞳を細めて頷いた。
「ふふ。分かりました。どうぞ、お気を付けて」
「ありがとう。あ、忘れるところだったわ。これ、ヴィヴィちゃんにプレゼントしようと思って」
「え? プレゼント……?」
義姉に渡された正方形の紙袋の中には、透明な容器に入った黄緑色の花に溢れていた。
「これ……?」
「フラワーバスに良いかなと思って。この黄色の花は 夜来香(イエライシャン)と言うの。読んで字の如く、夜に薫るのよ。後は、ライムという名前の薔薇ね」
娘と義娘の会話に興味を引かれたらしいジュリアンが立ち上がり、ヴィヴィの持つ紙袋を覗いてくる。